鹿児島4歳児死亡 子どもの安全を最優先に

9月6日 09:07

 悲劇が再び繰り返されてしまった-。鹿児島県出水市で4歳女児が死亡し、県警は同居していた母親の交際相手の男を暴行容疑で逮捕した。

 女児は8月28日、「風呂で溺れた」として病院に運ばれ死亡が確認された。死因は溺死。しかし女児の頭や体には暴行によるとみられる傷が複数あり、日常的な虐待がなかったかなどについて捜査が続いている。

 今回の事件でも、児童相談所の対応の遅れ、関係機関の連携不足などが指摘されている。全国で相次ぐ虐待事件の教訓がまたも生かされなかった。全容解明に向けて徹底した検証が必要だ。

 母子が鹿児島県薩摩川内市に住んでいた3月には、虐待の情報が寄せられていた。児相や警察が母子に接触したものの、目立った傷は確認できなかったという。県警はその後、3月下旬から4月上旬にかけて夜間に1人で徘徊[はいかい]する女児を計4回も保護した。児相は児童福祉法に基づく一時保護を決定したものの、母親が警察から引き取り、実施はされなかった。

 その後も児相は、母親のネグレクト(育児放棄)を認定するにとどまり、一時保護には踏み切らなかった。容疑者の男が同居していることも確認できていなかった。児相が調査を進め、踏み込んだ対応を取っていれば違う展開になっていた可能性もある。

 母子は7月に出水市に転居。市は8月上旬、複数の病院から「体にあざがある女児がいる」との連絡を受けたが、児相や県警にこの情報を伝えていなかった。

 こうした危険の兆候を示す情報について、児相や自治体が放置した責任は重い。過去の虐待事件の教訓を重く受け止め、それぞれの現場が危機意識を深めていれば、救えた命ではなかったか。

 東京都目黒区で昨年3月に起きた5歳女児虐待死事件を受け、政府が決定した緊急対策は、虐待通告から48時間以内に安全確認ができなければ児相が立ち入り調査を実施し、警察との情報共有も進めることをルール化した。

 しかし、札幌市で6月に2歳女児が衰弱死した事件では、児相は積極的に動かず、安全確認を怠っていた。今回も、調査不足と各機関との連携不足から、子どもの安全確保がなされなかった。

 昨年度に児相が扱った児童虐待は約16万件。10年前の4倍近くに増えており、人手不足は深刻な課題だ。国は児童福祉司の増員など体制強化を打ち出しているが、対応は追い付いていない。市町村や警察との役割分担や各機関の連携強化なども進め、一刻も早く十分な子どもの見守り体制を確保すべきだ。

 東京の事件では、保護責任者遺棄致死の罪に問われた母親の裁判員裁判が始まった。死亡した女児が生前、ノートなどにつづった「ゆるしてください」の言葉が痛々しい。救えるはずの命を失わないために、子どもの安全確保を最優先するルールを現場が徹底する必要がある。