カシミール問題 自治権剥奪、撤回すべきだ

8月25日 09:14

 インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方を巡り、両国の対立が激化している。これまで何度も戦火が交えられてきた地で、再び核保有国同士の軍事的緊張が高まることは、両国のみならず南アジア地域の安定を考える上でも看過できない事態だ。

 原因は、ヒンズー至上主義の流れをくむインドのモディ政権が、イスラム教徒が多数を占める北部ジャム・カシミール州の自治権を一方的に剥奪したことにある。同政権は、宗教間の対立をあおる強権的な行動を改め、剥奪措置を撤回すべきだ。

 ヒンズー教徒が多数派のインドと、イスラム教が国教のパキスタンは、1947年に英領インドから分離独立した。しかし、カシミール地方は藩王がヒンズー教徒だったためインドに帰属。同州は憲法で幅広い自治権が与えられ、イスラム教徒が多数派の唯一の州となったが、両国は領有権などを巡る争いを続けた。72年に暫定的な実効支配線が定められたものの、その後も断続的に衝突が起きている。

 モディ政権は自治権を剥奪した後、現地に治安部隊を投入し、政治家や活動家ら多数を拘束。電話やインターネットを遮断し、道路を封鎖した。イスラム過激派のテロを防ぐのが目的と主張しているが、住民の反発を力で抑え込もうとしているのは明らかだ。さらに10月末には、同州を連邦政府直轄地にするとしている。

 州外のインド人に不動産取得を認めたことも新たな火種となっている。ヒンズー教徒が多数移住し、人口構成が変化する可能性があるからだ。イスラム教徒とヒンズー教徒の対立激化は避けられず、宗教間の分断がインド全体に広がりかねない。

 パキスタンは「民族浄化が起きている」と非難し、インド大使追放など対抗措置を打ち出した。カシミール地方の一部を実効支配している中国もインドを批判したが、モディ政権は「内政問題だ」と反論している。

 パキスタンの要請で国連安全保障理事会の会合が開かれたものの、意見が一致せず議長声明などは出せなかったのは残念だ。国際社会は引き続き両国に自制を促し、軍事衝突を避ける努力を続けなければならない。