日韓軍事協定破棄 首脳同士で事態の打開を

8月24日 06:51

 韓国は22日、日本と結んでいる軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。日本の対韓輸出規制強化によって両国間の安全保障協力環境に重大な変化が生じたため、協定を維持することは「韓国の国益にそぐわない」と判断したという。

 韓国は日本の輸出規制強化を元徴用工問題への報復と位置付けており、軍事協定の破棄は、その対抗措置である。歴史問題に端を発した両国の対立は通商分野から安全保障分野にまで拡大した。北朝鮮の非核化見通しが依然、不透明な中での協定破棄決定は、理性より感情を優先した措置と言わざるを得ない。強く再考を求めたい。

 衝撃は米国にも広がっている。日韓の防衛協力が後退し日米韓3カ国の連携が機能しなくなれば、北朝鮮や中国、ロシアに対抗する北東アジア戦略も見直しが必要となるからだ。ポンペオ国務長官は「失望している」と明言。「元の正しい関係に戻るための取り組みを始めることを望む」と述べ、日韓関係正常化へ対話を促した。

 互いの国民世論を背景にエスカレートする一方の日韓関係の悪化を修復するのは、事務レベルの協議だけではもはや困難だろう。安倍晋三首相と文在寅[ムンジェイン]大統領が膝を交えて協議し、事態の打開を図るほかあるまい。

 GSOMIAは、軍事機密を他国と共有する際に、第三国への漏えいを防ぐために結ぶ。日韓間では2016年11月に締結され、それまで米国を経由して行われてきた北朝鮮の核・ミサイルに関する情報の交換が、円滑かつ迅速に行われるようになった。

 ただ、協定は1年ごとの更新制で、失効の90日前までにどちらかが終了の意思を伝えれば破棄される。今年の判断期限が24日に迫る中、日本は「地域の平和と安定に寄与するもので、日韓関係が厳しい状況にあるものの連携すべき課題は連携すべきだ」(菅義偉官房長官)と延長を求めていた。

 北朝鮮が最近、発射を繰り返しているのは新型の弾道ミサイルとみられている。日米韓での緊密な情報交換と連携が今こそ必要なはずだ。韓国の決定はあまりに早計で失望を禁じ得ない。北朝鮮に融和のメッセージを送る狙いも透ける。米国が北朝鮮の短距離ミサイル発射を事実上容認する中、日本としてはミサイル防衛体制を再検討する必要も出てこよう。

 日韓関係悪化により、多くの分野で影響が出始めている。韓国では日本製品の不買運動が拡大。韓国からの訪日旅行者も激減し、日本の観光地には苦境に直面しているところもある。民間の交流にも中止の動きが相次いでいる。

 今回の軍事協定破棄には韓国内にも懸念の声が少なくない。両国政府は互いに相手側に非があるとの姿勢だが、責任を押し付け合っているだけでは事態は動くまい。両国にとって真の国益確保のためには今、何をするべきなのか。感情に任せた発言や対応は厳に慎み、大局を見据えて最適解を見いだしてもらいたい。