「森友」捜査終結 あしき前例がつくられた

8月20日 08:26

 学校法人「森友学園」を巡る財務省の決裁文書改ざんで、有印公文書変造・同行使容疑などで大阪第1検察審査会の「不起訴不当」議決を受けた佐川宣寿元国税庁長官らについて、大阪地検特捜部は再び不起訴とした。

 検察審査会は改ざんを「いかなる理由があっても許されず、言語道断の行為だ」と厳しく批判していた。国民の多くが同じ認識だろう。にもかかわらず、改ざんに携わった官僚が、誰も刑事責任を問われることがないままでの幕引きである。国民感覚からは懸け離れた判断で、到底、納得できるものではない。

 民主主義の根幹を成す公文書管理の問題について、起訴のハードルを高くするあしき前例が、重大犯罪を担当する検察特捜部によってつくられてしまったと言わざるを得ない。

 特捜部は不起訴について、「起訴するに足りる証拠を収集することができなかった」と説明した。改ざんで文書の証明力が変わったかどうかの検討で、「根幹部分が変更されたものではない」と判断したものとみられる。

 改ざんは、安倍晋三首相が国会で、「私や妻が関係していれば首相も国会議員もやめる」と発言したことを契機に始まった。昭恵夫人と学園との関係を示す記述を削った改ざんは、この問題での国会審議のまさに根幹に関わるものである。それを重要な変更と見なさない判断が妥当とは思えない。

 国権の最高機関である国会を官僚が欺く行為を不問としたことは、重大なモラル崩壊を「大したことではない」と、お目付け役であるはずの検察がお墨付きを与えたようなものではないか。

 一方、特捜部は学園に対しての国有地売却で大幅な値引きがなされた問題でも、交渉に携わった財務省近畿財務局職員らを再度の不起訴とした。

 この問題についても検察審査会は「法廷で事実関係を明らかにすべく公訴を提起する意義は大きい」としていた。その公訴・公判を回避する不起訴について、特捜部はどのような証拠を集めた上でそう判断したのか。詳細に説明する必要がある。

 司法の道が閉ざされたことで、この問題の真相究明は再び国会が主舞台となろう。佐川氏は昨年の証人喚問で、首相や昭恵夫人の指示や影響は「一切なかった」と述べる一方で、なぜ改ざんしたかについては「訴追の恐れ」を理由に口を閉ざした。不起訴の確定でその支障はなくなった。国会は再喚問し、佐川氏は応じるべきだ。

 ただ、政府側に幕引きを急ぐような動きが出始めているのが気になる。改ざんの中核的役割を担い停職1カ月の処分を受けた当時の財務省理財局総務課長を、駐英公使に充てる人事が16日発令された。キーマンを海外に置き実質的に接触しにくくする露骨な異動とみられても仕方あるまい。安倍首相自身が約束した「丁寧な説明」が依然、国民から問われていることを、首相は強く自覚すべきだ。