海賊版サイト対策 官民連携し包囲網構築を

8月19日 09:19

 著作権者に無断で漫画などを掲載し、閲覧やダウンロードできる海賊版サイトに対する政府の対策が足踏みしている。

 海賊版サイトへの接続遮断(ブロッキング)や違法ダウンロードの規制強化を図る著作権法改正に続き、サイトを閲覧しようとする利用者の端末画面に警告を表示する「アクセス警告方式」も先の有識者会議で実施困難と断じられ、海賊版対策は三たび頓挫した。

 対策論議は空回り

 確かに、海賊版サイトの横行は目に余る。出版社の売り上げや作家の収入が減少するといった被害も広がっている。政府が「特に悪質」と名指しし、対策に乗り出すきっかけになった「漫画村」による被害は3千億円以上とされる。サイト閉鎖で雑誌と単行本を合わせた漫画の売り上げは回復したが、悪質サイトは後を絶たない。

 しかし、政府の対策論議は空回り気味だ。昨年4月に海賊版サイトへの接続を強制的に断ち切るブロッキングを柱とする緊急対策を決定。法制化を目指して有識者会議を設けたが、ブロッキングは全てのユーザーの通信をチェックし特定の通信先への接続を遮断する必要があり、憲法が定める「通信の秘密」を侵害する恐れがあるといった慎重論が続出。報告書すらまとめられず棚上げとなった。

 著作権法改正案も

 その後、文化庁は、文化審議会(長官の諮問機関)で違法ダウンロードの対象を拡大する著作権法改正についての議論を進め、報告書を基に改正案をまとめた。

 改正案は、これまで音楽と映像に限っていた違法ダウンロードの対象を漫画や書籍、論文、写真などあらゆるコンテンツに広げるとともに、海賊版サイトだけでなく個人のブログや会員制交流サイト(SNS)からのダウンロードや画面保存(スクリーンショット)も規制対象に加える内容。継続または反復した悪質な違反に対して刑事罰を科すことが大きな柱となっていた。

 ただ、これでは対象が広すぎて私的な創作や研究、また社会問題に関する情報収集などでインターネット利用者の萎縮を招く可能性があり、別件捜査に乱用される恐れも否定できない。著作権の専門家や漫画家団体が、ネット利用者を萎縮させないよう規制対象の絞り込みを求める声明を発表するなど反対意見が噴出。今年の通常国会への提出を断念した。

 一方、総務省が今年4月から議論を進めてきたアクセス警告方式も、ブロッキングと同じように全ての通信をチェックする必要があり、「通信の秘密」に抵触する恐れが指摘され、日の目を見ることなく終わった。

 内閣府が最近まとめた対策案は、ブロッキングの実現になお含みを持たせており、著作権法改正案の修正も選択肢として残っている。ただ、社会の重要なインフラであるネットの規制につながる海賊版サイト対策は、ネット上で自由に情報が行き交う環境を制約する副作用を伴う。慎重の上にも慎重な検討が求められる。

 実を結ぶ民間主導

 政府の行き詰まりをよそに、民間主導の試みは少しずつ実を結びつつある。ブロッキングを巡って対立した通信事業者と大手出版社は、信頼感の醸成を目的にトップ同士らが顔を合わせる会合を継続的に開催。情報を共有し、通信事業者が啓発を強化することで違法サイトの利用抑制を狙う。

 著作権団体と広告団体の連携も進む。両団体は近く協議会を発足させ、違法サイトの収入源となっている広告出稿の停止に向けた対応を強化するという。

 海賊版サイト問題を一気に解決する“特効薬”はない。民間のこうした試みを着実に積み上げながら、官民で連携し対海賊版の包囲網を地道に構築してもらいたい。