天皇のお言葉 不戦の誓い改めて示した

8月18日 08:55

 戦後生まれの天皇陛下が即位後初めて、政府主催の全国戦没者追悼式に臨まれた。

 「お言葉」は、上皇さまがこれまで内外に発信されてきた先の大戦に対する反省と、世界平和への思いを引き継ぐ姿勢を示すものとなった。戦争を知らない世代が国民の8割を超える中、不戦の誓いを改めて国民に示す機会になったと言える。

 上皇さまは、広島や長崎、沖縄をはじめ、サイパン、パラオ、フィリピンなど被爆地や激戦地の訪問を重ね、国内外の犠牲者の慰霊を続けられた。戦後70年の2015年の戦没者追悼式では「先の大戦に対する深い反省」という表現を追悼の言葉に盛り込み、歴史を直視する姿勢を示した。

 天皇陛下もお言葉に、「深い反省」という文言を盛り込まれた。ただ、「国民」を「人々」に、「深い反省とともに」とされていた一節を「深い反省の上に立って」と言い換えるなど、上皇さまの言葉を踏襲しながら、新たな平和を築こうとする陛下独自のメッセージも込められていたようだ。

 一方、安倍晋三首相は式辞で「戦争の惨禍を繰り返さない」という誓いは令和でも変わらないとしたものの、近隣諸国への加害責任と反省には今年も触れなかった。これまで過去の歴史に対して「謙虚に向き合う」としてきた文言も消えた。首相の言葉からは、歴史を直視しようとする姿勢が希薄になっている印象が拭えない。

 戦後74年がたち、戦争の惨禍を直接知る人たちは急速に減少している。総務省が4月発表した推計によると、現在の人口の約84%にあたる1億574万人が戦後生まれとなった。30年前に約103万7千人だった旧軍人の恩給受給者は今年3月時点で約1万4千人まで減り、広島・長崎の被爆者もこの間、約35万3千人から14万6千人と半数以下になった。

 敗戦時に11歳だった上皇さまは、近年顕著になってきた戦争記憶の風化を懸念。15年の誕生日会見では、「年々、戦争を知らない世代が増加していきますが、先の戦争のことを十分に知り、考えを深めていくことが日本の将来にとって極めて大切なことと思います」と述べられた。天皇陛下も同年、「謙虚に過去を振り返るとともに、戦争を体験した世代から戦争を知らない世代に、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられることが大切」と発言されている。

 国民の間で戦争の記憶が薄れていく中、上皇さまと陛下との間で受け継がれてきたように、悲惨な戦争体験と記憶を継承することは、われわれ国民の課題でもあることをしっかり心に刻みたい。

 上皇ご夫妻は自らの活動や振る舞いによって、平成の時代にあった皇室の在り方をつくってこられた。その歩みは平和と寛容、文化といった言葉に象徴されると識者は評する。そうしたご夫妻を間近に見てきた天皇陛下が、令和の時代をどう歩み、形づくっていかれるのか見守っていきたい。