北朝鮮ミサイル 静観の先の展望見えない

8月14日 09:09

 北朝鮮が日本海に向けて、短距離弾道ミサイルとみられる飛翔[ひしょう]体の発射を繰り返している。7月25日から8月10日までに計5回10発を発射。飛行距離が600キロを超えたものもあった。韓国のみならず、日本の本土も射程とする危険な挑発行為である。

 米韓が5日から実施している合同軍事演習に対抗する狙いがあるとみられる。加えて、米朝首脳は6月末の板門店[パンムンジョム]会談で、非核化を巡る実務協議の再開で合意している。今後の交渉で譲歩しない姿勢を明確にし、国内の引き締めを図る思惑もあろう。

 国連安全保障理事会の決議は、北朝鮮に対して弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射も禁じている。今回の連射に対しても、英仏独など多くの国が「安保理決議違反だ」と非難している。

 ところが、米国のトランプ大統領は「短距離で、多くの国が保有している」と容認。北朝鮮と「短距離に関する合意は一度も交わしていない」とまで言い切った。北朝鮮の矢継ぎ早なミサイル発射の背景には、トランプ氏が容認しているうちに兵器の近代化を一気に進めたいとの狙いも透ける。

 しかし、問題の本質はミサイルの射程の長短ではなく、北朝鮮が国際社会の合意に反して、周辺国との緊張を高めていることにあるはずだ。

 一連のミサイル発射には、対立が深刻化する日韓を揺さぶる狙いもあろう。しかし、安倍晋三首相は「日本の安全保障に影響を与える事態ではない」と繰り返し、静観を決め込んでいる。北朝鮮がミサイルを発射するたびに「国難」と叫び、厳戒態勢を強いていた数年前とは、様相が全く異なる。

 政府内でも「あらゆる弾道ミサイルの発射を許さない」(岩屋毅防衛相)と訴える一方、「米国と緊密に連携する方針に変わりはない」(菅義偉官房長官)と慎重姿勢を見せるなど、軸足のぶれが目立つ。静観を続けた先にどんな事態が起きると想定しているのか。政府としての展望が見えない。

 首相が「前提条件なし」の日朝首脳会談を実現するための障害をなくし、拉致問題解決へ一歩でも近づきたいのは分かる。日米の不一致が表面化すれば北朝鮮に付け込まれる、との懸念もあろう。しかし、静観するだけでは結果的にミサイルの連射を許し、北朝鮮を増長させてしまうのではないか。日本にとっての大きな脅威に対しては、ぶれずにノーの意思表示を重ねるべきだ。

 トランプ氏によれば、金正恩[キムジョンウン]朝鮮労働党委員長は手紙で、一連のミサイル発射を「少し謝罪」。米韓合同軍事演習が終われば発射をやめ、非核化協議を再開したいと伝えてきたという。

 しかし、ミサイル発射に対する日米韓の姿勢があやふやなままでは、結束した行動はできないと、北朝鮮にも見透かされるばかりだろう。日本として容認できない一線はどこまでなのか。政府には、協議再開前に明確に示してもらいたい。