同性カップル公認 多様な生き方認める一歩に

8月10日 09:26

 性的少数者(LGBT)のカップルを、結婚に相当する関係として公認する「パートナーシップ制度」を4月に導入した熊本市で8日、戸籍上は同性のカップルが、初めてパートナーとして認められた。

 欧米を中心に同性婚の法制化が進む中、日本政府は「夫婦」はあくまで男性と女性との立場で、同性婚を認めていない。

 今回のパートナー認定も法的効力はなく、実効性は限定的だが、カップルの行動と熊本市の施策が、性別にとらわれず、多様な生き方を認める社会の実現に向けた一歩となるよう期待したい。

 同性カップルは、長く一緒に暮らしていても、法定相続人にはなれず、子どもを育てる場合に共同親権を持てなかったり、税制上の配偶者控除を受けられなかったりといった不利益がある。

 また、病気やけがで命の危険にさらされても、パートナーが医療行為の方針決定に関わることはできず、病状の説明を受けることや付き添いさえ許されないことも多いという。

 パートナーシップ制度は、こうした生活環境の改善を求める性的少数者の声から生まれたもので、日本では、自治体を中心に性的少数者カップルを公認する動きが進んでいる。

 熊本市によると、2015年の東京都渋谷区を皮切りに、7月3日現在で24自治体が制度を導入し、521組が公認を受けている。

 とはいえ、都道府県レベルでは7月1日に導入した茨城県のみ。制度がある自治体と、制度がない自治体とで認められる公的な立場や権利に格差も生じている。また、自治体によっても行政サービスが異なり、熊本市でも夫婦や親子などに限られていた公営住宅の入居が可能になること以外、行政サービス上のメリットはない。

 性的少数者や同性カップルへの理解が進んでいるとはいえ、異性婚とは保証される立場や権利に大きな開きがあり、相続や親権の問題など「家族」になるための法的ハードルは高い。その点では、熊本市のパートナーシップ制度も環境改善のゴールではなく、スタートととらえるべきだろう。

 熊本市役所であった宣誓証明書交付式で、公認カップルになった2人は「偏見は拭い切れていない。恥ずかしいことではないが、周りを驚かせたくなかった」と匿名で取材に応じた理由を説明し、性的少数者への理解が広がらない現状への複雑な心境を吐露した。背景にある社会の根強い偏見や差別を解消する行政の不断の努力も求められる。

 総人口の7~8%とされる性的少数者が抱える指向や悩みは多様で、伝統的な家族観や両性のみに基づく法律や社会保障制度では救えない現実がすでに明らかになっている。

 同性カップルの権利も幅広く認められるべきだろう。国や自治体は性的少数者が抱えるさまざまな現実と正面から向き合い、環境整備を進めていく必要がある。