米中摩擦激化 大国の責任の重さ自覚を

8月9日 09:23

 米政権が対中制裁関税第4弾の発動表明に続き、中国を「為替操作国」に認定した。貿易不均衡とハイテク分野の覇権争いに端を発した米中貿易摩擦は、関税による制裁・報復合戦だけでは決着せず、通貨政策という未知の領域に突入することになった。


 米中貿易摩擦の出口が見通せなくなったことで、世界の金融市場には動揺が広がっている。金融市場の混乱は経済を不安定にし、世界景気の下押し要因となる。主要国では、景気を下支えするための政策金利引き下げが本格化している。

 米中の対立は貿易戦争の枠を超え、安全保障や外交の分野にまで拡大している。しかし、世界首位と第2位の経済大国である両国には、世界経済を安定させる使命があろう。責任の重さを自覚し、不毛な争いを早く終わらせるべきだ。

 米政権が為替操作国の認定に踏み切ったきっかけは、上海外国為替市場で人民元が対ドルで約11年ぶりの安値をつけたことだ。

 米財務省はこれまで、半期に1度の外国為替報告書で中国を「監視対象」に指定するにとどめ、様子見の姿勢を保ってきた。しかし、米中貿易摩擦による経済失速を懸念した中国当局が輸出に有利な元安を容認したとの見方が広がり、態度を一変させた。元安を防ぐことで追加関税の効果を保つ狙いがあるとみられる。

 ただ、中国の為替政策が元安誘導に転換したとの確証はない。それどころか、中国当局には、元買い介入をしばしば実施してきた経緯もある。中国にとって元安は、輸出に有利な半面、海外への資本流出を加速させ、対中融資が減るなどのリスクもあるからだ。米国は為替操作国に認定した根拠を明確に説明するべきだ。

 一方で、中国の為替政策に不明瞭な点があるのも事実である。知的財産権の侵害や国有企業への過剰な補助金、技術移転の強要といった不公正な経済慣行を改善するとともに、為替政策の透明性の向上にも努めるべきだ。

 市場には「トランプ米大統領が為替介入を指示してもおかしくない」との声もある。中国を為替操作国だと非難する米国がドル安誘導に走れば自己矛盾との批判は免れまいが、これまでも非論理的な政策を重ねてきたトランプ氏だけに予断を許さない。

 さらに、米国は5月末に発表した外国為替報告書で、日本も「監視対象」に指定している。日銀が追加の金融緩和を実施すれば、米国が円安誘導だと批判の目を向ける恐れもある。日本政府は、米国が今後の貿易交渉で為替条項の導入を要求する事態も想定し、対処方針を固めておくべきだ。

 米中は9月にワシントンで閣僚級の貿易協議を開催する予定だ。自国優先の身勝手な覇権争いを続けても、世界を不幸にするだけだ。両国はそのことを肝に銘じ、制裁と報復の悪循環を断ち切る糸口を一刻も早く見いだしてもらいたい。