日韓関係悪化 冷静さを取り戻し修復を

8月5日 09:25

 日本政府は、輸出管理に優遇措置を与える「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。これに対し、韓国の文在寅[ムンジェイン]大統領は「盗っ人たけだけしい」「今後起きる事態の責任は全面的に日本政府にある」などと強い口調で反発し、亀裂を深めている。

 安倍、文両政権間で生まれた対立の余波はさらに民間交流の中断にまで及び、「反日」「嫌韓」の感情もかつてないほど高まっている。深まった相互不信と対立を解きほぐすことは容易ではあるまいが、非難を繰り返すだけでは状況は悪化するばかりだ。日韓両政府は冷静さを取り戻し、対話による関係修復に努力すべきだ。

 元徴用工問題で韓国最高裁は昨年10月、日本企業に賠償を命じる確定判決を出した。判決が1965年の日韓請求権協定に反すると訴える日本政府は、事態収拾のため政府間協議の開催を求めたが、文政権は「司法判断を尊重する」として具体的な対応を先送り。日韓政府間の議論はかみ合わないまま時間だけを浪費してしまった格好だ。

■民間交流の中止も

 日本政府は、半導体材料の対韓輸出手続きを厳格化する制裁措置を発表。その理由を「貿易管理上の信頼関係が損なわれたため」としたが、韓国側は「元徴用工問題への報復」だとして反発。国会での与野党対立を一時休戦し、超党派で対日対応に乗り出した。

 韓国内では日本製品の不買運動や日本旅行を自粛する動きが広がる一方、自治体や民間の交流事業も相次いで中止となるなど反発が広がっている。

 日本政府は、通商分野での圧力を徹底すれば、韓国は必ず譲歩すると予測しているのだろう。しかし、その読みは楽観的過ぎはしないか。

■民族意識も背景に

 日本統治下の19年に起きた抵抗運動「三・一運動」から今年で100年の節目を迎えている韓国では、民族意識がかつてなく高まっている。8月15日には、日本統治からの解放記念日「光復節」も控えている。文大統領が「日本がわれわれの経済を攻撃」しているとの厳しい認識を示したのも、そうした国民的感情の高まりを意識してのことだろう。

 そうした中で日本が新たに決定した「ホワイト国」除外決定は、文字通り「火に油を注ぐ」形となり、韓国政府は「日本は越えてはならない一線を越えた」と強く批判。「断固とした対応を取るしかない」と態度を硬化させた。

 韓国政府は対抗措置の一つとして、日本を「ホワイト国」から除外し、世界貿易機関(WTO)への提訴準備を加速すると表明した。65年の国交正常化以来、両国企業人の努力によって積み上げられてきた相互依存の経済環境が損なわれるのは確実だ。

 日韓の対立が長期化かつ常態化すれば、北東アジアの経済圏だけでなく、安全保障環境まで不安定になる。

■安全保障にも波及

 韓国からは、日本の輸出規制への対抗策として、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄をちらつかせる発言も出ている。GSOMIAが破棄されれば、短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返す北朝鮮への対応を含む日米韓の連携が崩れかねない。

 このため、これまで日韓対立への関与に及び腰だった米国も仲介に乗り出した。2国間で収拾できる一線を既に越えているとの危機感の表れだろう。

 米国は、新たな措置を取らず時間をかけて交渉する「据え置き協定」を受け入れるよう働きかけている。日韓両国は、米国だけでなく国際社会からどのような視線が注がれているかも冷静に考え、信頼関係の再構築に努めるべきだ。