英国新首相 「合意なき離脱」の回避を

7月26日 08:57

 メイ英首相の後任を選ぶ英与党・保守党の党首選は、欧州連合(EU)からの離脱強硬派として知られるボリス・ジョンソン前外相が勝利し、新首相に就任した。

 ジョンソン氏は、経済や市民生活に混乱必至の「合意なき離脱」も辞さない立場で、期限の10月末離脱を目指す構えだ。しかし、2016年の国民投票で決まった離脱を実現できないまま、議会や国内世論の分断は深刻の度を深めており、新首相は難しいかじ取りを迫られよう。

 3年間首相を務めたメイ氏は、EUと離脱合意案をまとめたが、議会の支持取り付けに繰り返し失敗。3月末の予定だった離脱期日は2度も延期された末、混迷の責任を取り5月に辞任表明した。

 かつてない危機感に包まれた党首選で、ジョンソン氏は親しみやすい人柄や巧みな話術で支持を集め、穏健離脱派の候補を大差で破った。「EUとの合意の有無に関係なく離脱する」と訴え続けたことも、長引く膠着[こうちゃく]状態を打開できる存在として党員の期待を集めることにつながったのだろう。

 ただ、事実上の首相選びとなる新党首選は、約16万人の保守党党員の投票で行われたにすぎず、有権者の1%にも満たない。年齢や性別の構成にも偏りがあり、広く国民の信任を得たとは言い難い。

 英下院内の意見は割れたまま、保守党は過半数に満たず、地域政党の閣外協力を得ている状態だ。新しいリーダーとなったジョンソン氏の方針を今後、議会や国民が支持するかは見通せない。

 ジョンソン氏は今後、離脱合意案の再交渉を模索しながら、離脱後も英国をEU規則に縛り付ける条項の見直しを求める方針だ。これに対し、EU側は再交渉には応じない姿勢を堅持している。

 ジョンソン氏は、これまで仮に「合意なき離脱」に至っても、他国との貿易関税は回避できるなどと楽観論を展開してきた。一方のEU側も「合意なき離脱への準備は万全」と繰り返している。

 しかし、実際に何が起こるかを完全に予測することは困難だ。さまざまな対策を講じても「想定外の混乱」は避けられないだろう。世界経済への影響も懸念される。

 英国もEUも互いに譲歩せず、何の進展もないまま離脱期限を迎えるのは最悪のシナリオだ。「合意なき離脱」が招く経済や市民生活の破局的な混乱は避けなければならない。

 ジョンソン氏は、20代で英紙特派員を務めていた頃にはEU批判を展開。ロンドン市長に転身する選挙では一転して親EUの立場で当選。EU離脱を問う国民投票では離脱派に転じた。その日和見的な姿勢には批判の声もある。

 英国の最大の課題は、EU離脱を巡って与野党も世論も分裂したままであることだ。新首相に求められるのは、国民全体の幅広い声に耳を傾けることだろう。国民の分断を埋め混乱を回避するため、離脱期限延長や、解散・総選挙で国民の信を問うといった選択も視野に入れた打開策が求められる。