災害時の安否確認 人命優先で適切な公表を

7月24日 09:04

 全国知事会が23日、災害時の安否不明者や死者の氏名公表に関し、統一基準の策定を国に要請する提言を採択した。災害時にいち早く住民の安否を確認することは救助の要だ。人命優先で適切な公表のあり方を確立してほしい。

 災害時の不明者公表で期待されるのは、迅速な安否確認や有効な捜索活動の展開だ。一方でプライバシー保護の観点から批判もあり、特に個人情報保護法が成立した2003年以降、自治体の対応は割れてきた。

 14年の御嶽山噴火で長野県は不明者を非公表。15年の関東・東北豪雨に襲われた茨城県では境町が公表し、常総市は不明者15人を非公表とした。同市では3日後に全員の無事が判明したが、捜索に当たった関係者は肩すかしを食らい公表の是非が問題となった。

 昨年7月の西日本豪雨では、不明者が一時40人超に上った岡山県がおおまかな住所や氏名、年齢などを公表。生存情報が寄せられ、安否確認が一気に進んだ。これに対し、愛媛県は家族の同意が得られなかったなどとして非公表とし、広島県は一部公表にとどめた。今回の提言は、広域災害時の対応が自治体によって異なる事態を防ぐ狙いもある。

 氏名公表への慎重姿勢を強めた個人情報保護法だが、具体的な取り扱いを定めた自治体の条例は例外を設けている。熊本県など多くの自治体は「個人の生命、身体または財産の保護のため、緊急やむを得ないと認められるとき」の公表を規定。半面、国の防災基本計画に公表規定はなく、対応のばらつきを生む要因にもなっていた。

 知事会の提言に先立ち、共同通信が5~6月に都道府県知事47人に求めたアンケートでは、不明者の氏名を「公表する」と3人が回答。「条件が整えば公表する」と答えた25人と合わせると、6割が前向きな姿勢を示していた。

 また、不明者公表を巡る市民意識については、岩手日報社が17年に本格調査している。首都直下地震や南海トラフ巨大地震が懸念されている東京都と高知県、阪神・淡路大震災を経験した神戸市の住民計千人に聞き取った結果、「公表してほしい」「どちらかといえば公表してほしい」とした住民が東京84%、高知83%、神戸72%に達したという。プライバシー意識が強い都市部でも公表を優先し、匿名化に対しては「安否情報が分からない」と懸念する声が上がっていた点は注目すべきだろう。

 ただ、この調査では、氏名公表によって「マスコミの取材にさらされる」「勧誘などトラブル」といった点を懸念する声も多数あった。メディアスクラム(集団的過熱取材)などを生じさせない姿勢が、われわれ報道機関に求められていることも、改めて肝に銘じなければならない。

 近年は全国で大規模な風水害が相次ぎ、首都直下地震や南海トラフ巨大地震は桁違いの被害が想定されている。被害を最小限に食い止めるためにも、有効な安否確認の態勢や方法の構築を急ぎたい。