憲法改正 積極支持得られていない

7月23日 08:19

 参院選で自民、公明両党は目標とした改選過半数を上回ったものの、維新などを含めた安倍政権下での憲法改正に前向きな「改憲勢力」は、国会発議に必要な3分の2の議席を維持することはできなかった。

 安倍晋三首相は、今回の選挙で自衛隊を明記する9条改正を訴え、「国会審議をする政党か、全くしない政党を選ぶのかを決める選挙だ」と主張。選挙結果については「(憲法改正を)しっかり議論していけという国民の声をいただいた」とし、改憲論議推進への支持を得たとの認識を示したが、果たしてそうだろうか。

 改憲勢力の3分の2割れは、公明、維新が議席を伸ばした一方で、改憲を前面に掲げた自民が改選議席を9減らし、単独過半数も維持できなかったことによる。

 安倍首相の下での改憲に反対する声は、直近の共同通信の世論調査で50%に達している。参院選でも改憲は主要な争点とはなっておらず、改憲推進への積極的支持を獲得したとは言えまい。

 現状を考えれば、安倍政権は、改憲論議を拙速に進めるべきではない。異論を含めた国民の声に広く耳を傾け、改憲に固執することなく、政策の優先順位を見極めていくことを求めたい。

 首相は、10月上旬にも想定される臨時国会で停滞している衆参両院の憲法審査会を再開し、改憲論議を前に進める考えだ。しかし、連立を組む公明の山口那津男代表は「今回の参院選で、改憲は議論になり得なかった」と述べ、改憲、特に9条改正への慎重姿勢を崩していない。

 10月に消費税率引き上げを控え、米中貿易摩擦とともに経済への悪影響が懸念されている。年金問題では「財政検証」の公表、外交では日米貿易交渉と、選挙後に先送りされてきた課題も待ち構えている。

 臨時国会ではこれらの問題への対応を優先すべきだ。ホルムズ海峡の安全確保に向けた米国の有志連合構想についても、憲法9条そのものより、9条解釈を変更し集団的自衛権の一部行使を認めた安保法制の運用をまず議論すべきだろう。

 優先度が高いとは言えない改憲論議を首相の意向で強引に押し進めるような姿勢を示せば、改憲への理解が広がるどころか、国民の分断、反発を招くことになるのではないか。

 自民改憲案に関し、首相は22日の会見で「3分の2の賛同が得られる改正案を練り上げたい。自民党案だけにとらわれず、柔軟に議論していく」と軌道修正。公明、維新はもちろん、改憲に前向きな議員もいるとして秋波を送る国民民主党を巻き込んで改憲論議を進める考えを示した。

 野党の対応も問われる。国民民主が腰の定まらない対応をすれば、同党や野党陣営の分裂につながりかねない。野党各党もそれぞれ党内論議を尽くし、対案を含めた改憲へのスタンスを明確に国民に示すべきだ。