ハンセン病首相談話 被害回復へ指導力発揮を

7月13日 09:26

 政府は、ハンセン病元患者家族の差別被害を認め、国に損害賠償を命じた熊本地裁判決の控訴見送りに関し、「政府として深く反省し、心からおわび申し上げる」と謝罪する首相談話を発表した。

 政府による家族への公式謝罪は初めてだ。不当な差別を受けてきた歴史を考えれば、首相がおわびや反省を表明した判断は妥当と言えよう。

 談話では、元患者家族について、「社会において極めて厳しい偏見、差別が存在したことは厳然たる事実だ」との認識も示し、「家族の皆さまと直接お会いして気持ちをお伝えしたい」とした。

 家族側が求めていることではあるが、面会が参院選向けのパフォーマンスとならないよう注視していく必要がある。

 2001年に小泉純一郎首相(当時)が元患者本人への謝罪と補償を表明した際の首相談話と比べれば具体性の乏しさは否めない。談話では「訴訟への参加・不参加を問わず、家族を対象とした新たな補償の措置を講ずることとし、検討を早急に開始する」と表明したが、誰を補償対象とするかなど具体的方針の明示を避けた。

 家族の範囲については、正確な実態は把握されていない。根強い差別を恐れて名乗り出るのをためらう家族もいよう。被害者の掘り起こしが課題となる。

 熊本地裁判決は、差別被害に遭った元患者家族に、共通の慰謝料として30万円を認定。療養所入所者が親や配偶者の場合は100万円、兄弟姉妹の場合は20万円を加算した上で、1人当たりの賠償額は33万~143万円とした。これが被害に対する補償と言えるだろうか。政府は、家族に真摯[しんし]に寄り添った補償額を検討すべきだ。

 一方、首相談話と同時に発表された政府声明は、熊本地裁判決が、賠償請求権の消滅時効の起算点を、先行事例である15年9月の鳥取地裁判決の日以降とした点に関し、「国家賠償法、民法の解釈の根幹に関わる問題点がある」と批判した。家族訴訟弁護団と国の主張には大きな隔たりがあり、調整が難航する可能性がある。

 元患者家族も高齢化が進んでおり時間の猶予はない。首相は談話が示す誠意ある態度で、被害回復に指導力を発揮してもらいたい。