首相イラン訪問 仲介役に徹し説得継続を

6月14日 09:32

 米国とイランの対立が深刻化し中東地域の緊張が高まる中、安倍晋三首相が日本の現職首相として41年ぶりにイランを訪れ、ロウハニ大統領との首脳会談に臨んだ。

 米国との対話に応じるよう求めた安倍首相に対し、ロウハニ師は、米国の原油禁輸制裁が停止されれば対話の道も開ける、との考えを示した。

 イランが原油禁輸制裁の停止を強く求めるのは、石油収入が体制存続に欠かせないからだ。イランの石油収入は国家収入の4割を占める。しかし、昨年4月に日量約270万バレルあった原油輸出量は、米国の全面禁輸によって今年5月には数十万バレルに減少。イランはこの半年間で100億ドル(約1兆1千億円)以上の収入を失った。イランが、トランプ氏との親密な関係をアピールする安倍首相に期待するのもそのためだ。

 しかし、原油の禁輸措置は米政権が推し進める圧力路線の根幹であり、安倍首相がトランプ氏に働き掛けたとしても心変わりさせるのは容易ではあるまい。日本としては今後も仲介役に徹し、対話が実現するよう粘り強く説得を重ねる必要がある。

 核兵器の原料にもなる濃縮ウラン貯蔵量の制限など、国連安全保障理事会の常任理事国である米英仏中ロにドイツを加えた6カ国とイランとの間で成立した核合意について、イランはこれまで国際原子力機関(IAEA)の査察を受け、順守してきた。しかし、トランプ米政権は一方的に核合意から離脱。イランのミサイル開発が中東不安定化の要因となっているとして順次制裁を復活させてきた。

 安倍首相は核合意について「イランが引き続き順守することを期待する」と表明した。13日に首相と会談したイランの最高指導者ハメネイ師も「核兵器を製造も、保有も、使用もしない。その意図もない」と述べた。

 ただ、ロウハニ師は核合意について現時点で離脱する考えのない姿勢を示しながらも「もし戦争が始まれば断固として対抗する」と強調。原子力空母や爆撃機を中東に派遣した米政権の軍事的圧力には屈しない考えも示している。

 日本としては、米国に対して原油禁輸措置の早期停止を求める一方、イランに対しても、中東混乱の要因の一つである各地の民兵組織への軍事支援や弾道ミサイルの開発など、軍事衝突につながりかねない挑発的な行動は避けるよう求める必要がある。

 緊張緩和に向けた安倍首相の取り組みには、米国も支持を表明している。イラン、米国双方からどこまで歩み寄りを引き出せるか。困難な作業となろうが、丁寧な取り組みを重ねてもらいたい。

 今回のイラン訪問に関し、菅義偉官房長官から「両国間の仲介を意図しているものではない」との発言が飛び出した。夏の参院選を控え、会談の成果に対する期待値を上げたくないとの思惑からだろう。見せ掛けの外交成果をアピールするだけなら、国際社会の失望を招くことを肝に銘じるべきだ。