地上イージス配備 根本から協議やり直しを

6月12日 09:21

 地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備先を巡り、防衛省は、秋田市の陸上自衛隊新屋[あらや]演習場を「適地」と結論付けた調査データに誤りがあったことを明らかにした。

 防衛省は誤りを修正しても結論に変わりはないとしたが、地元はずさんな調査に態度を硬化。秋田県の佐竹敬久知事は10日、協議を白紙に戻す考えを表明した。

 もともと地元住民を中心に配備には強い懸念が示されてきた施設である。誤った調査を根拠に「ほかに適地はない」と説明してきた防衛省の責任は大きく、その信頼は失墜した。速やかに再調査した上で、改めて説明を尽くし、根本から協議をやり直すべきだ。

 イージス・アショアは、日本に向けて発射された弾道ミサイルをレーダーで探知し、大気圏外で迎撃するシステム。政府は、東日本と西日本に各1基配備して日本の全土をカバーすることとし、新屋演習場と山口県の陸自むつみ演習場を配備先に選定している。

 調査は、地元自治体に選定理由などを説明する目的で実施された。東北地方の新屋以外の計19カ所の地形などを検討。いずれもレーダーを遮る山があるなどとして「不適」と判断した。

 ところが、このうち9カ所で、水平線から山を見上げた際の角度にあたる仰角を過大に記載していたことが分かった。最も誤差が大きかった調査地点では、実際は約4度の仰角を約15度と計算。他の地点にも2~5度の誤差があり、数値を修正すると4カ所の仰角が10度以下に収まった。

 防衛省は、計算する際に使った高さと距離の地図データの縮尺が異なっていることに気付かなかったことが原因と説明。人為的ミスだったとして陳謝したが、修正しても19カ所が「不適」であるとの認識は変えていない。これでは、そもそも新屋への配備ありきの調査だったのでは、と疑われても仕方あるまい。

 新屋の周辺住民らからはもともと、有事の際に攻撃対象になることや、レーダー電波による健康被害などを懸念して配備に反対する声が強かった。今回の不手際を踏まえ、「防衛省は本当のことを説明しているのか」との不信の声が高まったのは当然だろう。さらに、山口県からも丁寧な対応を求める声が上がっている。

 イージス・アショア自体についても、安倍晋三首相は「純粋に防御的なシステムだ」と説明するが、ロシアは米国の巡航ミサイルを搭載可能だとして繰り返し懸念を表明している。日本をカバーするのに秋田、山口は最適地なのかという疑問のほか、イージス艦に加えて地上イージスまで配備する必要性は低いという指摘もある。トランプ米政権からの武器購入圧力で導入を急がざるを得ないのでは、との疑念も消えていない。

 こうした点についても、政府は説明を尽くすべきだ。そうしなければ、巨費を投じて配備する計画自体に、さらに異論の声が高まることは必至だろう。