国民投票法改正 課題洗い出し、徹底議論を

5月20日 09:43

 衆院の憲法審査会で、憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正議論が行われている。

 改正案は、投票日当日に駅や商業施設でも投票できるよう「共通投票所」を設けることなど7項目で、国民投票を現行の公職選挙法とそろえるため当然行うべき改正だ。立憲民主党なども異論はなく、実際に投票が行われる段階になれば、短期間で処理できる内容と言えよう。

 ただ、与党は安倍晋三首相が掲げる2020年の改正憲法施行を見据え、初の国民投票実施に向けて早期に障害を取り除くことを狙う。これに対し野党側には改正案を処理すれば、改憲議論の加速を招くとの警戒感が強い。

 07年の国民投票法成立から12年。そもそも国の形を定める憲法の改正につながる法律でありながら、現行法には不備が目立つ。実施が具体化していないうちに、課題を徹底して洗い出し、しっかりした法改正を目指すべきだ。

CM規制の在り方

 国民投票時のCM規制の在り方は主要課題の一つだろう。

 改憲の国民投票は、活発な議論が国民の間で行われることを期待しており、投票運動は原則自由との考え方に立っている。現行法では、投票14日前から投票日までの間は改憲案への賛否を呼び掛けるテレビ、ラジオのCMは禁止されるが、それ以前は自由だ。

 法制定時の参院委員会の付帯決議は、CM規制について「公平性を確保するためのメディア関係者の自主的な努力を尊重する」とする。ただ、広告にも表現の自由の保障を認めるのが裁判の先例だ。行き過ぎた規制は民主主義の根幹を損なう恐れがあり、民放連の担当者も「表現の自由に抵触する恐れがあるため、CM量の自主規制はできない」と表明している。ともあれ、国民投票が具体化する前に詰めておくべき課題だろう。

資金の多寡で差も

 現行法では、出所不明な資金であっても、上限も使い道も制限はない。有権者の賛否が二分しやすい国民投票で、賛否どちらかの側が豊富な資金を使って大量のCMを流せば、投票行動に大きな影響を与える懸念がある。資金の多寡によって差が生じ、投票の公正さを害するようなことがあってはなるまい。

 選挙では費用に上限が定められ、出納責任者が収支報告を行い、事後的にチェックされる。国民投票でも、表現の自由に配慮しながら、例えば運動できる団体を絞った上で使える資金に上限を設け、投票後の収支報告を義務付けるといった方策を考えるべきではないか。

 一方、現行法制定時には想定されていない課題も浮上している。

 インターネットや会員制交流サイト(SNS)の飛躍的な利用者数の増加だ。ネットの広告費は、昨年地上波テレビの広告費にほぼ並んでおり、ネットCMへの対処も喫緊の課題となっている。

特別な監視が必要

 また、多くの人がスマートフォンなどで情報を得る時代になり、ネットニュースやSNSによる発信が急速に普及。フェイクニュースの横行や、16年の米大統領選で起きた他国による選挙介入も懸念される。特別な監視が必要で対応策を早急に議論すべきだ。

 現行法では、どんなに投票率が低くても有効投票の過半数の賛成があれば改憲が成立する。それで国民の納得が得られるとは思えない。一定の投票率を成立の条件とする「最低投票率」や、有権者の一定割合の賛成を必要とする「絶対得票率」の検討も必要だろう。

 国民投票は改憲の是非を問う重要な手続きであり、スケジュールありきで法改正を進めることなどあってはならない。与野党は、国民に信頼される制度となるよう議論を尽くしてもらいたい。