景気判断「悪化」 内外に目凝らした政策を

5月15日 09:18

 内閣府が13日、3月の景気動向指数を発表し、基調判断を6年ぶりに「悪化」へ引き下げた。これまでは、数カ月前に景気がピークを迎えていた可能性を示す「下方への局面変化」としてきたが、今回は、それより1段階厳しい表現となった。景気が既に後退している事態を示しており、日本経済は正念場を迎えたといえる。政府、日銀には内外の諸情勢に目を凝らした細心の政策運営を求めたい。

 「悪化」判断の大きな要因は、世界1、2位の経済大国である米国と中国が対立している貿易摩擦の激化だろう。財務省が14日に発表した2018年度国際収支速報でも経常収支黒字が5年ぶりに減少し、中国経済減速に伴う日本企業の輸出の鈍化を明確に示した。

 海外要因については、日本が直接、影響を及ぼすことはできないが、手をこまねいているばかりではいけない。日本は6月の20カ国・地域(G20)首脳会合の議長国だ。世界中で深刻な状況を引き起こしつつある貿易摩擦にどう対応するのか、責任を持って方向性を打ち出す立場にある。

 遠回りかもしれないが、国際協調や自由貿易の重要性、世界貿易機関(WTO)改革の必要性などを、米中両国と国際社会に粘り強く訴えて事態の改善を目指さなければならない。

 国内景気については、腰折れを防ぐ財政、金融面のてこ入れが検討課題になる。ただ、安倍政権は景気の拡大期にも公共事業などの財政出動を重ねたため、追加の経済対策を講じても人手不足の影響もあって効果が出にくい可能性がある。マイナス金利など異例の金融緩和を6年余り続けてきた日銀も、政策余力は限られそうだ。

 こうしたことから、10月に予定されている消費税増税にも延期の観測がくすぶり始めている。しかし、先送りすれば3度目となって財政再建の道や国際的な信認を失うリスクがある。景気の腰折れは防がなければならないが、同時に、日本政府の財政再建への取り組みを市場がさらに疑問視するような事態も避けるべきだ。

 消費税を巡る与野党間での議論の活発化は、夏の参院選を控えた駆け引きの要素もあるのかもしれないが、財政再建は「政争の具」にするべきではないだろう。あくまでも政策論として、妥当性や実効性を議論の対象とすべきだ。

 企業業績は多少落ち込み始めているとはいえ、利益水準は高い。内部留保も豊富だ。外需の不調に比べれば、まだ内需は底堅い。過度の悲観論に傾くのは尚早だ。

 連合が今月10日に発表した全国の今春闘の集計では、賃上げの平均は率、額ともに前年同期を上回った。連合熊本が7日までにまとめた県内企業の賃上げも、熊本地震の復興需要を背景に前年同期を超え、過去5年と比べても高い水準となっている。この流れを変えてはいけない。

 政府、日銀はさらなる賃上げや積極的な設備投資に、民間企業を誘導するような政策に知恵を絞るべきだ。