憲法記念日 「不断の努力」が問われる

5月3日 09:29

 「憲法にのっとり」「日本国および日本国民統合の象徴として」。平成から令和へ、代替わりの儀式の中で、上皇さまや天皇陛下が重ねて憲法やその条文に触れるお言葉を述べられたことで、いつにもましてその重みを感じながら、きょう新時代の憲法記念日を迎えることになった。

 1947年の施行から72年の歴史を重ねた憲法の条文の中でも今、特に読み返しておきたいのが、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と規定した12条であろう。

権利の上にねむる

 基本的人権を「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」とうたう97条と対になったこの条文を、政治学者の故丸山真男さんは次のように読み替えている。

 「国民はいまや主権者となった、しかし主権者であることに安住して、その権利の行使を怠っていると、ある朝目ざめてみると、もはや主権者でなくなっているといった事態が起こるぞ」と。

 貸したカネを「返してくれ」と請求し続けなければ貸主は保護されない民法の法理を例えに引いたこの文章で、丸山さんは権利が「ある」ことに安住し、「する」べきことをしない人を「権利の上にねむる者」と名付けた。

 振り返れば、先月終了した統一地方選では、県内を含む全国で、投票率が下がったり、立候補者がおらず無投票となったりした選挙が相次いだ。憲法が保障する参政権を国民自らが放棄するような状態がますます進む中で、「権利の上にねむる者」は現実化しつつあるのではないか。

首相の提案を追認

 憲法の精神を維持する「不断の努力」は、国民の代表である安倍晋三首相はじめ国会議員ら政治家にこそ強く求められるものであろう。だが、安倍政権が掲げる改憲、とりわけ憲法9条をめぐるこれまでの動きをたどると、ここでも「なすべきことはなされているのか」という疑問を感じる。

 一昨年の憲法記念日に首相は9条の戦争放棄の1項、戦力不保持などを定めた2項を維持した上で、自衛隊を明記するという独自案を唐突に公表。2020年の改正憲法の施行を目指すとも明言した。それを受け、自民党の憲法改正推進本部は昨年3月、首相提案に沿った形で改憲条文案をまとめた。

 そもそも自民党は12年に9条の2項を削除し「国防軍」保持を記した改憲草案を党議決定している。党議を重ねてきた改憲案を大きく変更するものであるにもかかわらず、急きょまとめられた改憲条文案に対しては党内で十分な論議もなく、首相の提案をただ追認しただけという印象は否めない。

 さかのぼれば、安倍政権は15年、集団的自衛権の一部行使を容認した安全保障関連法を成立させている。これも、歴代内閣が現憲法下では集団的自衛権は行使できないとしてきた解釈を、大きく変更したものだ。最高裁や内閣法制局の長官経験者らも「憲法違反の法律」と指摘する中、政権は国会を数の力で押し切った。

ワイルドに進める

 十分な合意なしで進める強引な手法への反発もあってのことだろう。共同通信社が今年の憲法記念日を前に実施した世論調査では、憲法改正に「関心がある」「ある程度関心がある」が71%に上ったにもかかわらず、安倍政権下での改憲には54%が反対し、賛成の42%を上回った。

 こうした安倍政権の改憲推進に国民の理解が広がらない状況の中で、首相側近とされる萩生田光一・自民党幹事長代行が先月18日のインターネット番組で、改憲論議が進んでいない衆参両院の憲法審査会について、「新しい時代になったら、少しワイルドに憲法審査を進めていかなければならない」と述べた。

 同じ番組内で「消費増税延期もあり得る」との考えを表明したことの方がクローズアップされたため、大きな話題とはならなかったが依然、スケジュールありきで改憲を進めようとする安倍政権の姿勢がうかがえる発言だった。

 今夏には参院選が予定されている。ここ数年の国政選挙では、改憲は経済政策など他の大きな争点にかすんだ形となっていたが、首相が掲げる20年までの期限を考えれば、間違いなく一番の争点であり、そうすべきだろう。選挙結果いかんによっては、一挙に国民投票まで進む事態も考えられる。

 これまで以上に私たちが、憲法が保障した権利を行使する「不断の努力」が問われる。そうした選挙であることを強く自覚して臨みたい。