4月18日付

4月18日 09:30

 大泥棒の石川五右衛門は謎の多い人物である。歴史学者の磯田道史さんは、五右衛門と細川家、後の熊本藩との関わりは深いのでは、と書いている▼『一色軍記』という書物によれば、京都府北部にあった城の城主で明智光秀方についた五右衛門の父は細川家に討たれた。五右衛門は細川家や、光秀を討った豊臣秀吉を恨み、豊臣系大名の御殿を狙って財宝を奪ったという(『歴史の愉[たの]しみ方』中公新書)▼権威、権力に反抗する五右衛門の姿は義賊として大衆の心をつかんだ。そうした系譜に連なるのが、漫画の「ルパン三世」ではなかろうか。神出鬼没の怪盗の活躍に胸躍らせた方も多かろう。魅力的なキャラクターを生み出したモンキー・パンチ(本名加藤一彦)さんが亡くなった。81歳だった▼北海道東部の霧多布[きりたっぷ]生まれ。地名の通り、1年の半分が霧で、布団を干しても濃霧や潮風で湿ってしまうような土地だった。子どものころから漫画を描くのが大好きで、地元の高校を卒業後、上京。新聞販売店で働きながら描き続けた▼米国の漫画雑誌『MAD』の影響を受けて誕生したのが「ルパン三世」だった。テレビアニメ化され徐々に人気が高まったが、当初は自作のスピード感とリズムをアニメで表すのは絶対無理、と思っていたという(桐山秀樹著『マンガ道、波瀾[はらん]万丈』徳間書店)▼個性的な登場人物が躍動する「ルパン三世」は、世代を超えて愛される作品になった。それは作者が私たちの「心を盗む」大泥棒だったから、かもしれない。