3月21日付

3月21日 09:21

 朝の出勤途中に近所の公園に寄ってみると、ソメイヨシノが咲き始めていた。枝ぶりがよく、毎年みごとな盛りを見せてくれる古木である。数えると7輪。ごく私的な「開花確認」となった▼一斉に咲くクローンと言われるソメイヨシノだが、同じ地域でも樹齢、標高、日当たりなど環境により咲き始めは異なる。私たちの方も、身近な木を眺めてそれぞれに開花を喜べばよさそうなものだが、それではどうも分かち合い感に欠ける。気象台に開花を「宣言」してもらえば、何となく公に認められたような気になって、「咲いたね」「花見はいつ?」と会話も弾む▼和歌に多く詠まれているのは山桜で、抗しがたい花の魅力を繰り返し歌にしたのは西行だった。〈あくがるゝ心はさてもやまざくら 散りなんのちや身に帰るべき〉。花に引かれて心は身から離れていったが、散ってしまえば帰ってくるだろうか▼そうやって人心を一つにまとめるからこそ、怖い花でもあるのだろう。「咲いた花なら、散るのは覚悟」と軍国主義のシンボルにされた時代もあった▼熊本地方気象台は、今年から観測用の桜の標本木を変更した。8年前の庁舎移転以来、近くの小学校の桜を標本木にしてきたが、自前の敷地内に植えた木が成長したためという▼長崎地方気象台はきのう、全国トップを切り桜の開花を発表した。熊本もそろそろではないか。平成最後の年から次年代へとつなぎ、春真っ盛りの開始宣言を委ねることになった。若い標本木さん、末永くよろしく。