3月20日付

3月20日 09:35

 先日の休みに西原村の俵山交流館「萌の里」まで足を延ばした。一帯ではちょうど野焼きが行われていて、至る所で炎と白い煙が上がっていた。その景色を眺めながら、このあと若草が芽吹き、再び美しい草原に生まれ変わる不思議さを思った▼こちらも「芽吹き」や「再生」に例えることができそうだ。今がたけなわの卒業式である。大勢の子どもたちが学びやを巣立ち、新しい環境へ飛び立っていく。きょうも県内の多くの小学校で式が開かれる▼有本真紀立教大教授の『卒業式の歴史学』(講談社)によれば、日本最初の卒業式は1876(明治9)年に陸軍戸山学校であった「生徒卒業式」だという。ラッパや太鼓による西洋式の音楽が響き渡り、成績優秀者には銀時計が贈られた▼その後、近代化の進展とともに大学や師範学校、小学校へと広がっていく。卒業式といえば全員で合唱し涙する場面が思い浮かぶが、それは日本特有の学校文化で、義務教育段階の卒業に当たって特別なセレモニーなど存在しない国も多い、と有本さんは言う▼ともあれ、卒業式は子どもたちにとって晴れの門出である。米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏が語った<ハングリーであれ。愚か者であれ>など、旅立ちを祝う名スピーチも数多い▼だが、小欄はあえて、作家の開高健さんがルーマニアで聞いたというこの諺を[ことわざ]贈りたい。大人の苦労人なら、はなはだ肌にしみ込む知恵の言葉だという。いわく<月並みこそ黄金>。一歩一歩ゆっくり進めばいい。