3月18日付

3月18日 09:20

 <あんたら、五尺の高さで物を見ますやろ。そやから目の前の火事しか見えへん。そこへいくと、わては五重の塔の上に立っとるさかい、大阪中の火事がみんな見える>▼歌謡曲『王将』のモデルとなった阪田三吉の言葉を、同じ浪速の伝説の棋士・升田幸三が自伝『名人に香車を引いた男』(日本図書センター)に引いている。名人と言われる人は、目の前の細事にとらわれず、大所高所から先の先を見通す大局観を持つものだ▼こちらはどんな大局観を持ってのことだろう。松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長が、市長選と知事選へ入れ替わって出馬する。松井氏が代表の大阪維新の会が掲げる「大阪都構想」の行き詰まり打開が狙いだ。今週、4年に1度の統一地方選がスタートするが、保守分裂の福岡県知事選などと並んでがぜん注目の的となった▼“クロス選”にすれば新たに4年の任期が生まれる。1年に2度も選挙する必要もなくなり経費の無駄遣いとの批判をかわすこともできる。将棋にたとえ、なかなかの妙手と評価する向きもあるが「党利党略」のための奇手との批判もあり、最善手と言えるかどうか▼大阪が日本経済に占めるシェアは大阪万博の直後がピークで、今は愛知に抜かれて3位に甘んじる。都構想には大阪の失地回復を図る狙いもあろう▼阪田、升田らと並ぶ希代の棋士・大山康晴の語録に、「平凡は妙手に勝る」というのがある。奇をてらわず地道に都構想の理解を広げる。それに勝る妙手はないような気もするが。