3月16日付

3月16日 09:19

 「砂漠の中に頭を突っ込むダチョウ」という言い方が欧米にあることを、広瀬弘忠・東京女子大名誉教授が紹介している(『人はなぜ危険に近づくのか』講談社+α新書)▼砂の中に頭を突っ込んで何も見ないようにしているダチョウに見立て、不幸や災いが自分の身に降りかかっているとは思いたくない人間の心理を表現している。これが、災害時の避難の遅れにつながるとされる「正常性バイアス」という心理だろう▼このところ急増している「アポ電」はじめ、電話やメールを使った特殊詐欺が後を絶たない理由にも「正常性バイアス」があるようだ。そのことを示すデータが、先日警察庁から発表された▼特殊詐欺の一つ、おれおれ詐欺に関する昨年の調査で、実際に被害に遭った人の8割近くが自分は被害に遭わないと思っていたと答えている。根拠については「だまされない自信があった」「自分には関係ないと思っていた」といった回答が多かった▼「確証バイアス」がこれに加われば、さらに詐欺を見破るのは難しくなる。自分の仮説や信念を検証しようとはするが、それを補強する情報や材料ばかりを集め、それに反するような情報を無視してしまうことだ。先の調査では被害に遭わなかった人の76%は誰かに相談していた▼広瀬さんは専門の災害心理学の立場から「しっかりと目を開けて、自分自身を襲ってくるリスクを見極める必要がある」と言う。決してダチョウになるなかれ、という戒めであり、詐欺から身を守る心得でもある。