2月18日付

2月18日 09:18

 エッセイストの松浦弥太郎さんは、雑誌「暮[くら]しの手帖[てちょう]」編集長時代に体調を崩し心療内科にかかった。だがどうしても渡された薬を飲む気になれない。ふと頭をよぎったのが「ちょっと走ってみようか」。43歳の冬だった▼「走りだしてからしばらくすると無心になることができて、それが僕にとってはある種の精神的なよりどころになっていました」(『それからの僕にはマラソンがあった』筑摩書房)▼なぜ人は走りたがるのか。理由はさまざまだろうが、「煩わしいことを忘れてすっきりしたい」-そう思い日々走り続けるランナーも多い。ランニングがいわば心の安定剤となっている▼昨日は熊本市で「熊本城マラソン」が開催された。約1万4千人が早春の肥後路を駆け抜けた。市民マラソンもすっかり定着し、国内では年間2千とも3千とも言われる大小の大会が催され、愛好者は約900万人に上るとされる。今日のストレス社会も影響しているのだろう▼ビジネスや医学の分野で今、「マインドフルネス」と呼ばれる心の訓練法が注目されている。瞑想[めいそう]などを通じ、「今この瞬間」に注意を向ける方法を学び、心の安定を目指すものだ。ランニングは無心となって自らと向き合えることから、その手段として取り入れられている▼<すでにある道は、あなたの道ではない。自分が一歩を踏み出していくことでつくられていく道。それが、あなたの道なのだ>。米国の神話学者ジョーゼフ・キャンベルの言葉だ。ちょっと走ってみたくなった。