2月14日付

2月14日 09:03

 「油断」の語源には諸説ある。王が臣下に油の入った鉢を持たせて「一滴でもこぼしたら命を断つ」と慢心を戒めた、という仏教の教えのほか、ゆったり、のんびりといった意味の「寛[ゆた]に」が音便化したとの説もある▼気を許して必要な注意を怠ると手痛い目に遭う-そんな「油断」という言葉を誰よりも巧みに使ったのが、8日に亡くなった堺屋太一さんだろう。通商産業省在職中の1975年、覆面作家として世に出した初の小説が、石油ショックを予測した「油断!」だった▼作品の原型は73年にできていたが、石油危機が実際に起きたためパニックをあおらないよう出版を遅らせたという。それでも、200万部の大ヒットとなった▼データに基づく大胆な予測を、近未来小説というスタイルで展開した堺屋さん。難しい問題をやさしく伝える姿勢は経済企画庁長官時代も変わらなかった。官僚としては70年大阪万博の開催をたった一人で立案。企画書作成のため自腹で400万円を使ったとの逸話も残る。当時の月給は4万円だったというから驚きだ▼堺屋さんのように先を読みながら夢に向かって前進する人は、油断して失敗することは少ないかもしれない。だが、そうでない人は「油断禁物」と念じ、慢心を戒め続けるほかあるまい▼受験シーズンは大詰め。最後の追い込みの時期だが、緊張が続かず、疲れ気味の受験生も多いのでは。家族も落ち着かない日々が続いていることだろう。くれぐれも油断せず、夢に向かってもうひと踏ん張り。