9月6日付

9月6日 09:28

 鎗[やり]だろうか、弓矢だろうか。武器らしき道具を手にした人たちが森を歩いている。空を何度も見上げ、様子をうかがっていることも分かる。あの人たちの目には、上空に静止して撮影を続けるドローンはどう映っただろう▼アマゾン先住民の保護に取り組むブラジルの政府機関が先日、これまで確認されていなかった部族の映像を公開した。外界と接触せず、文明とは無縁の営みを続ける部族が今もあることに世界中が驚いた▼ただ、部族と安易に接触することはできない。感染症などで全滅させてしまう恐れがあるからだ。ドローンという「奇妙な鳥」でのぞき見るぐらいがちょうどよいのだろう▼一方、中東イエメンの人々が見上げているのは、爆弾がひっきりなしに降り注ぐ空だろうか。内戦が続くこの国では、これまでに1万人超が命を落とし、人口の7割以上の1700万人が飢餓にあえいでいる▼先月は、軍事介入しているサウジアラビア主導の連合軍が遠足帰りの子どもたちを乗せたバスまで空爆した。積み上げられた遺体、血だらけになって泣きわめく小さな子…。現地の映像を見るたびに、人類はこれまで何を学んできたのかと打ちひしがれる。アマゾンとイエメンで撮られた二つの映像は、私たちに「文明とは何か、平和とは何か」と問い直しているようでもある▼澄んだ秋空を見上げるときは、遠く離れた国のどこかで空を仰ぎ見ている人々のことにも思いを致したい。彼ら、彼女らは何を願っているのか、と想像力を働かせながら。