6月13日付

6月13日 09:01

 原題に「ミッドサマー」とあるため、ひと昔前は「真夏」と直訳されることも多かった。シェークスピアの喜劇「夏の夜の夢」は本来、夏至のころを指すというから、今からの季節が舞台である▼欧州の伝承によれば、この時季には森に妖精が現れて、薬草の効き目が最も高まるという。「夏の夜の夢」でも、キューピッドの矢に触れた花の汁を、いたずら者の妖精パックが2人の男のまぶたにたらす。男たちはそれまで、嫌いだったり無関心だったりした女性に一目ぼれしてしまう▼昨年末まで戦火を交えんばかりにののしり合っていた2人が、「会えて光栄だ」と互いにたたえ笑顔で握手する。きのう、史上初めて開かれた米朝首脳会談は、まるでパックの魔法が効いたかのような光景だった▼「最初の1分で私は分かる」と、トランプ大統領は語っていた。数時間にわたる会談を経て、金正恩[キムジョンウン]委員長は話せる相手と見極めたのだろうか。共同声明では非核化への決意と引き換えに早くも北朝鮮に安全の保証を確約した▼朝鮮半島和平への歴史的一歩となるか。それとも、ともに独断専行と批判を浴びてきた2人のパフォーマンスに終わるのか。成果にはまだいくつも疑問が残るが、ここはひとまずはすに構えず、前者の結果を期待したい▼会談では拉致問題への言及もあったという。その行く末を被害者家族は祈るような思いで見守っている。県出身の松木薫さんらの無事帰国につなげる望みを、今度こそ、一幕の夢物語として終わらせてはなるまい。