5月16日付

5月16日 09:01

 自分が1人で電車に乗ったのは何歳の時だったろうと、ふと思った。小学3年になる双子の息子の、熊本から八代までの2人旅である。「切符はリュックのポケット」「駅にはおばあちゃんがいるから」▼緊張気味の2人と話していると同じ電車に乗るという女性が声を掛けてくれた。「子どもだけ? えらい。冒険、冒険。八代まで一緒に行こう」。親切な人に会えてよかったという思いか、ドア越しに少し安心したような笑顔が返ってきた▼そんなことがあったばかりだけにギャップに打ちのめされる。新潟市で小学2年の女児が殺害され、自宅近くの線路に遺棄された事件で、近くに住む23歳の男が逮捕された。下校途中、1人になったわずかな隙の凶行だ▼不審者による「声掛け」などが相次ぐ中、全国の学校で集団登下校や見守り活動が広がる。ただ、子どもが1人になる時間を完全に無くすことは難しい。これ以上どんな手だてがあるのだろう▼幕末・明治期に来日した外国人の記録から、西欧化・近代化する前の日本の姿を探った日本近代史家の渡辺京二さんは、著書『逝きし世の面影』で当時は「子どもの楽園」だったと書いた。子どもたちをかわいがり、育てたかつての大人たち。子どもを守った暗黙のルールはいつの間にか消えてしまったかのよう▼子どもを1人で歩かせるのは危険-。そんな認識を社会全体が共有する必要もあるのだろう。「危ないからダメ」ではなく、「親切な人に会えてよかったね」と話しかけたいのだけれど。