3月12日付

3月12日 09:39

 ホームズにはワトソン、ポアロにはヘイスティングズ。名探偵には推理を手助けする相棒が欠かせない。人間味あふれる振る舞いで事件をかき回し、時には何げない一言で解決の手掛かりを与える。ところが…▼「ダ・ヴィンチ・コード」などの大ヒットで知られる米国の作家ダン・ブラウン氏の新作「オリジン」が先日、日本でも発売になった。宗教学者ラングドンが美女と共に難解な謎に迫る、という物語の骨格は前作までと変わらない。ただ、異なる点が一つある。心強い相棒が、人ではなく人工知能(AI)なのだ▼作中のAIは、美術館の音声案内用ヘッドセットやスマートフォンを介して主人公を支える。類いまれなる処理能力と忍耐力を併せ持ち、判断は常に迅速で的確。献身的な働きに主人公も全幅の信頼を寄せていく▼あくまで小説の中の話であり、AIが違和感なく浸透するにはもう少し時間がかかろう。だが、2045年にはAIが人の能力を完全に超える、との予測もある▼AI先進国の米国では、対話型のAIスピーカーから突然笑い声が響き、持ち主を怖がらせる事案が相次いだとか。音声認識の不具合が原因らしいが、笑い話で済むうちはまだいい▼日本の官庁でも、いずれは公文書の作成管理にAIを使う日が来るだろう。都合の悪い文書を勝手に書き換えたりしないなら、生身の人間より信頼できる気も。しかし、あしき官僚の行動パターンを学習し、忖度[そんたく]や隠蔽[いんぺい]を駆使するようになったら…。考えただけでゾッとする。