11月30日付

11月30日 07:12

 2、3カ月前だったか。散歩途中、小さなパブの電光看板の文面に目が止まった。<味噌天神の経済を回そう>▼「味噌天神」とは、大通りを挟んでその店の対面にある神社であり、近くの電停の名称でもある。推察するに、近隣住民をお得意さんとする商いなのだろう。ささやかな訴えながら、コロナ禍にあって何とか地域の営みを維持していこうという店主の思いが伝わってきた▼南小国町など全国各地で地域再生に取り組んでいる環境ジャーナリストの枝廣淳子さんは、地域経済を穴のあるバケツに例える。水を注いでも穴から漏れてバケツに水がたまらない時は、注ぐ水を増やすよりも漏れ穴をふさぐ方が先決だ-と▼現状に照らせば、「Go To」キャンペーンは注ぐ水は大量でも、地域経済にとって大手旅行会社やグルメサイトなど外部への水漏れも多い。逆に前述のパブの訴えや地域限定の割引商品券などは、水は少量だが同時に穴もふさごうとする試みではないか▼思えば京都の老舗でみられる「いちげんさんお断り」も、伝統的な漏れ穴ふさぎだろう。解剖学者の養老孟司さんは著書『京都の壁』で「地元のお得意さんを大事にすることが、時代に左右されず商売を長続きさせる確実な方法」と評価していた▼今風に言うなら持続可能性の追求か。しばらくはお断りせずとも、インバウンドなどの「いちげんさん」は期待できない状況である。地域のつながりを支えに幾度の乱世もくぐり抜けてきただろう老舗の知恵は、古びていない。


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