10月1日付

10月1日 07:00

 古代ギリシャの預言者エピメニデスが言った。「クレタ人はうそつきだ」。ところが自身もクレタ人だった。本当にクレタ人がうそつきならば、発言もうそ。「クレタ人はうそつきではない」ことになり、矛盾する▼自己を含む集団に言及すると生じる「うそつきのパラドックス(逆説)」である。ふと思い出したのは自民党の杉田水脈[みお]衆院議員の発言が報じられたからだ。「女性はいくらでもうそをつけますから」▼党の非公開の会合で性暴力被害者の相談事業について説明を受けた際に言ったという。矛盾するかどうか以前に、被害者軽視の発言だったようだ。複数の出席者が認めたのに、本人は「言っていない」と否定していた▼ともあれ被害の虚偽申告があると受け取れる発言に、多くの人々が憤っていることは事実である。性暴力を信じてもらえずに再び傷つくセカンドレイプは大きな問題だ。被害者が口を閉ざすことへの懸念も広がる。インターネット上で26日に始まった抗議の署名は、5日間で10万人を超えた▼この間、野党は一斉に非難し、橋本聖子男女共同参画担当相も、記者会見で「自民党として適切な措置をするべきだった」と指摘した。そしてようやく昨日、見て見ぬふりはできないと思ったのか。下村博文政調会長が杉田氏を党本部に呼び出し、注意した▼ただ肝心の発言の有無は「本人に確認したが、公表する前提ではない」と結局、うやむやに。発言していないのなら、注意する必要はない。矛盾が生じる余地はないのだが。