9月17日付

9月17日 07:05

 「うそはほんとによく似てる」。谷川俊太郎さんの詩『うそとほんと』はこんな書き出しで始まる。「ほんとはうそによく似てる うそとほんとは 双生児…うそとほんとは 化合物」▼何度、うそをついただろう。子どものころ、母に叱られつい口走った苦い思い出。大人になっては、だれかをかばってうそを言ったり、「違う」という思いをのみ込み、自分を納得させたり。確かにほんととうそは紙一重▼菅義偉内閣がスタートした。人事について「思い切って私の政策、方向に合う人を」と語っていたが、顔触れには総裁選を支援した5派閥の主導権争いもにじむ。「脱派閥」はほんとかうそか。独自路線は。国民の理解は▼気になる言葉もあった。政権と方向性が異なる中央省庁幹部には「異動してもらう」ときっぱり。人事を握る内閣人事局をフル活用し政策を迅速に進めていく狙いだろう。しかし官僚支配も過ぎれば、官邸ばかりを意識し、うそをほんととごまかす忖度[そんたく]がはびこる▼森友・加計、桜を見る会問題がそれである。募った政治不信を尻目に菅首相は「調査した」「説明もした」と取り合わない構えだ。ただ、番頭なら「いずれにせよ」「指摘は当たらない」で済ませても、首相となればそうはいくまい。中身のある丁寧な説明と対話が求められる▼詩はこう終わる。「うその中にうそを探すな ほんとの中にうそを探せ ほんとの中にほんとを探すな うその中にほんとを探せ」。前政権に学んだ国民の政治を見る目をお忘れなく。