8月2日付

8月2日 07:01

 熊本学園大の前身に当たる東洋語学専門学校は、1942(昭和17)年に設立された▼きのう本紙に載った細江守紀新学長の紹介記事に、草創期の様子が触れられていた。同大の校史によると、源流はさらに09(明治42)年結成の東亜同志会や、その後の熊本海外協会にさかのぼる。「海外に雄飛する青年」の養成を目的とした団体だ▼戦前の熊本は語学教育に熱心で、「東洋語専」は中国語、ロシア語、マレー語を教えた。熊本商業学校(現・熊本商高)は英語に加え、第2外国語で主に中国語に励んだ。辛亥革命の指導者・孫文を助けた宮崎滔天[とうてん]が象徴するように、熊本とアジアの心理的距離は今より近かったかもしれない▼孫文の縁もあってか、県立図書館は85年、台湾政府から漢籍の法典とされる貴重な文書群「四庫全書」を寄贈された。30日に亡くなった李登輝さんは当時、副総統。88年に本省人(台湾出身者)として初の総統に就任後、数々の改革を成し遂げ、「台湾民主化の父」と慕われた▼日本の教育を受けた李登輝さんは、戦前のアジアと日本の“空気”を肌身で知る最後の世代だろう。「日本人は何一つ自信を失うことなんかありません」。激励や忠告も少なくなかったが、こちらが流ちょうな日本語に甘え、耳に心地いいことだけ選んで聞いていなかったか気になる▼11年前に熊本を訪れ、「国民学校時代に熊本出身の恩師がいた」と懐かしんでいた。ご冥福を祈るとともに、退場後の椅子をどう温めるか、下の世代が問われている。