7月1日付

7月1日 07:01

 1688(元禄元)年に発表された井原西鶴の『日本永代蔵』は、日本はもとより世界的にも経済小説のはしりといわれる。その中にこんな一節が。<近代、泉州に唐金[からかね]屋とて、金銀に有徳[うとく]なる人出来ぬ>▼近ごろ、泉州(今の大阪府南西部)に唐金屋という裕福な人が現れた。大船を造り神通丸と名づけ、難波[なにわ]の港に米を運び次第に家は栄え-と西鶴はつづる。唐金家は食野[めしの]家とともに、北前船による回船業や金融業で巨財を築いた一族である▼そんな商才や進取の気性は脈々と受け継がれるものなのか。両家が拠点としたのが今の大阪府泉佐野市。ふるさと納税の返礼品に加えアマゾンギフト券を贈るキャンペーンを展開し、2018年度には全国トップの500億円近くを集めた▼返礼品競争の過熱を問題視した総務省は昨年6月、泉佐野市など4市町を除外した新制度を始めた。同市は、過去の寄付金募集の実態を除外の判断材料としたのは違法として提訴。最高裁はきのう、市の主張を認め、除外決定を取り消した▼確かに、国は自治体への過度な介入を控えるべきだろう。だが割り切れなさも残る。制度の趣旨はあくまで「応援」。そもそも返礼品は必要か。また、寄付した人の住民税などが軽減されるため、寄付者の多い都市自治体は税収減少に悩む▼西鶴に戻れば、こんな言葉もある。<人、若い時貯へ[たくは]して、年寄りての施し肝要なり>。根付かぬ寄付文化や国と地方、都会と地方の関係…さまざまなことを考えさせるふるさと納税である。