4月9日付

4月9日 08:45

 「距離を置こう」。別れを切り出す常[じょう]套句[とうく]だが、今なら「あなたのことを守りたい」という意味かもしれない。感染リスクを下げるのに、隣人との距離を空ける「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」策が有効とされる▼古くからある公衆衛生戦略だが、新型コロナウイルスの感染拡大を機に浸透した感がある。米疾病対策センター(CDC)は、6フィート(1・8メートル)を推奨する。スーパーのレジに十分な距離を取って並ぶニューヨークの人たちを、映像で見た▼日本でも、テレビのニュース番組などで出演者同士の距離がだいぶ広がった。別室からの出演も増えた。安倍晋三首相がおととい、緊急事態宣言後に開いた記者会見も、座席の間隔が広めに取られていた。視覚に訴える効果も狙ったのでは▼緊急事態宣言の対象地域には「人との接触機会を7~8割減らす」という高い目標が課された。距離を意識せずして達成は難しい。可能なら外出自粛が一番。「実家に戻っておいで」との言葉を飲み込んでいる熊本の親御さんらもおいでだろう▼同居家族は、在宅ワークや臨時休校などで一緒に過ごす時間が増える。皮肉にも、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待のリスクが高まるとの指摘がある。内閣府は夜間・休日の相談窓口の新設を急ぐというが、監視された中で助けを求められるかどうか▼いつ終息するとも知れぬコロナ禍で、誰もがストレスにさらされている。友人は、隣人は大丈夫か。こんな時こそ、心の距離はぐっと縮めたい。