4月7日付

4月7日 07:07

 シンパシーは、同情や共感を意味する言葉。混同しそうな単語にエンパシーがある。それではエンパシーとは何か。この問題に自信満々に答えるのが、このノンフィクションの主人公だ▼『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)は、英国在住のライター、ブレイディみかこさんが人種差別や貧困がはびこる英国の中学校を舞台に、息子の成長を描いた作品である▼エンパシーとは「他人の感情や経験などを理解する能力」のこと。「ぼく」の言葉に置き換えれば「誰かの靴を履いてみること」となる。「いろんな混乱を僕らが乗り越えていくには、自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像してみることが大事なんだって」。思春期の「ぼく」には、日々生じる混乱に打ち勝つための大切な術[すべ]のように映ったのかもしれない▼混乱と言えば、今なら新型コロナウイルス感染症であろう。英国では日本時間の昨日、エリザベス女王が動画で特別演説。国民に外出の自制を求め、団結による克服を呼び掛けた▼足元の日本では、安倍晋三首相がいよいよ緊急事態宣言を発令する。対象地域の知事が出す外出自粛要請には、法的根拠が生じる。地域外で暮らす住民への心理的影響も大きそうだ▼前例がなく先行きも見通せないコロナ禍では、自分と異なる状況にいる人々に思いを巡らすことがより求められよう。安倍首相には、エンパシーを遺憾なく発揮してもらいたい。団結が求められるのは日本も同じである。