3月26日付

3月26日 08:01

 作家の城山三郎さんによれば、企業を活性化させるには管理職に人間的な何かが必要だという。技術や経営のエキスパートであるだけでなく、会社の気風といった精神的なものを社内にみなぎらせる役割が求められる▼では、どんな人がふさわしいか。人間通であることや的確機敏な判断力などいくつか条件がある。中でも、要求される役割を見事に演じる役者になることができ、つらくて孤独なその演技に耐え自信を失わぬ人、という項目が印象に残った▼演技というと表面だけと思われそうだが、要は社員の信頼を得られるかどうかである。経営者に限らず、組織のトップには必要な資質ではないか。ならば通算在職日数が3千日を超え、前人未到の記録を更新中の安倍晋三首相はどうだろう▼さぞかしつらく孤独な日々と拝察するが、ここに来て難しい局面が訪れた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京五輪・パラリンピックの延期が決まったことだ。衆院解散・総選挙といった首相が描く政治日程にも影響しそうである▼そんな国内の事情はさておき、世界中に広がるウイルスの猛威を見れば延期もやむを得まい。先送りしても五輪を「完全な形」で開催できるかは分からないが、中止という最悪の事態は回避できた。やはり、選手や観客の安全が第一である▼冒頭の管理職の条件には「淡々たる人柄」というのもある。首相としての役割を演じるには、やじを飛ばしたり会見を打ち切ったりしない懐の深さが必要なことは言うまでもない。