2月14日付

2月14日 07:02

 戦後の政界を揺るがした事件に造船疑獄がある。検察は収賄容疑で佐藤栄作・自民党幹事長の逮捕を決めるものの、吉田茂首相の意を受けた犬養健法相が指揮権を発動、捜査は核心に触れぬまま終わる▼無念の検事らはそれでも検事総長に隠忍自重を求める。これを批判したのが事件を担当した一人で後に検事総長となる伊藤栄樹。「よしと信じたことが拒否された以上、総長は職を辞して国民の批判を仰ぐべき」(「秋霜烈日」朝日新聞社)と▼政治と検察の距離が再び注目を集める。政府が官邸の信頼が厚い黒川弘務・東京高検検事長の定年を延長したためだ。来年8月定年の稲田伸夫検事総長の後任候補らしい。検察庁法に定年延長規定はない。国家公務員法を使った裏技である▼振り返れば“安倍カラー”人事はこれまでも度々あった。集団的自衛権の行使容認に向けた内閣法制局長官やNHK会長しかり。だが、首相を逮捕するかもしれない組織のトップまで許されるのか▼忖度[そんたく]を期待した人事だとすれば、形を変えた指揮権発動という批判も出よう。IR問題なども収束に向かうのだろうか。ワンマンと批判の強かった吉田内閣は造船疑獄により崩壊する。さて、首相在職日数で吉田を抜き、ワンマンぶりでも肩を並べる安倍政権の将来は▼野党の質問に、首相が「意味がない」とやじを飛ばし紛糾した国会。週明けに発言するらしいが、果たして意味のある言葉が出るのやら。人ごとのように「真摯[しんし]に」「丁寧に」と繰り返す姿が目に浮かぶ。