10月22日付

10月22日 07:09

 ラグビー選手が最も恐れる英単語は、「アゲイン」なのかもしれない。大学ラグビー部を舞台にした藤島大さんの小説「北風」(集英社文庫)では、「もう一度」の声が連発される過酷な練習風景が描かれている▼ボールへまっすぐに走り込む。瞬発力に欠けたらアゲイン。もっと出るはずと何度もダッシュする。よしっ、と声がかかっても「忘れないうちにアゲインいっとこう」。体に染み込ませる反復練習である▼同じように猛練習を重ね、「考えるラグビー」を模索したチームの挑戦が終わった。ワールドカップ(W杯)決勝トーナメントで、日本代表は南アフリカに敗れた。前半は2点差。前回の逆転劇を思わせる展開だったが、後半は強豪国の強烈なパワーに圧倒された▼日本は1次リーグで、荒尾高(現岱志高)出身の流大選手らを起点に判断力を重視した高速ラグビーを展開。2人がかりで突進を止めるタックルで強豪を次々に破り、世界を驚かせた。この日も果敢に攻めたが、緑色の壁を突破できなかった▼ナイスゲームだった。「北風」に出てくる英単語がもう一つ。「ナイスこそが最上の称賛である」。ナイスタックル、ナイスラン。仲間の言葉が挑戦する心を後押しする。成長を示した日本代表にもそんな称賛が似合う▼W杯の4強激突を見守りながら、4年後に向けた「アゲイン」が始まる。まずは個の力を高めることからだろう。歴史を切り開いた日本代表の背中を子どもたちが見つめている。新しいワンチームがまた生まれる。