10月13日付

10月13日 08:01

 ノーベル賞の選考理由には世界が今、直面している問題へのメッセージが含まれている。先日、吉野彰さんへの化学賞授与が決まったリチウムイオン電池開発に対する「化石燃料を使わない社会を可能にする」との評価には、とりわけそれがくっきりと表れていたように思う▼吉野さんは「(電池などの)デバイスの開発者にはなかなか順番が回ってこない」と周囲に漏らしていたというが、もしかしたらその順番到来を後押ししたのは、ノーベル賞の母国スウェーデンの「環境少女」グレタ・トゥンベリさんだったのかもしれない▼地球温暖化阻止を求める世界の若者たちの運動の火付け役となったグレタさんは先月、国連本部で開かれた気候行動サミットで演説。「全ての未来世代の目は、あなたたちに注がれている。私たちを失望させる選択をすれば、決して許さない」と各国首脳らに向けて訴え、大きな反響を呼んだ▼きのう台風19号が、かつてない勢力を保ったままで東日本を中心とした列島を襲った。猛烈な風と豪雨。小欄をつづっている今も、各地の甚大な被害が次々と報じられている▼「未来世代」の代表として、グレタさんが警告のメッセージを発し続けてきた巨大台風の発生など温暖化に伴う気候変動の危機。それが既に未来でなく現在の災禍として、私たちの眼前に現れたことを自覚せざるを得ない▼<祈るべき天とおもえど天の病む>(石牟礼道子)。不安な夜を過ごす被災地の人々の無事を祈りながら、病んでしまった天を思う。