10月12日付

10月12日 08:01

 県内でも公開中の邦画「見えない目撃者」は、視力を失った元警察官の女性が偶然聞いた声を手掛かりに猟奇殺人の謎に迫るサスペンス。主演の吉岡里帆さんは複数の視覚障害者と会い、暮らしぶりや外出時の不安を学んで役作りを重ねたそうだ▼印象的なシーンがある。不審者に追われた主人公は無人の地下道に逃げ込む。相棒の盲導犬ともはぐれ、追い詰められるが、足元にあった点字ブロックに気づき、その感触を頼りに全力で走って難を逃れる▼現実味のある演出かは分からない。けれど、信じられるものが他に何もない中で疾走する主人公の姿を見ていると、点字ブロックの大切さに改めて気づく。観賞者が感想を語り合うネット上のサイトにも「点字ブロックって大事」「自転車とか止めたら絶対ダメ」といった書き込みがあふれている▼作品に影響されたからだろうか。今も残念でならないことがある。熊本市中央区の大型商業施設「サクラマチ クマモト」の建設に伴い、周辺にある点字ブロックの一部がアスファルトで埋められていた一件だ▼開業の数日後には修復されたが、工事の無頓着さにあきれ果てた人も多かったに違いない。にぎわい復活はうれしいけれど、すべての人に優しい中心市街地でなければ胸は張れない▼熊本では今後も、創造的復興の名の下に規制緩和と再開発が進みそうだ。高く大きく、と背伸びすることも大切かもしれないが、足元への目配りは忘れてほしくない。改善すべき場所や施設は山ほどあるのだから。