10月10日付

10月10日 08:01

 カラフルな糸の塊かと思ったら、ちらしや色紙に切り込みを入れたものだという。細く切った紙は自然にらせん状になり、独特の造形となる。切り込みの幅は細いものは0・1~0・2ミリほどしかないというから驚く▼県立美術館本館で開催中の「生[き]の芸術 アール・ブリュット展覧会」の出品作の一つだ。展覧会は障害のある人たちの創作活動を支援する活動の一環。5回目となる今回は、県内で活動する26人の作品が並んでいる▼アールはフランス語で「芸術」、ブリュットは「ワインが生のままであること」の意味。美術の専門教育を受けていない人が生み出した絵画や造形を指す概念で、フランスの画家ジャン・デュビュッフェが提唱した▼熊本では市民団体「アール・ブリュット・パートナーズ熊本」が展覧会開催や作家の発掘を草の根で展開。登録作家は年々増え、現在は約70人を数えるという▼会場に並ぶ絵画やちぎり絵、コラージュなどの作品群は、あるものは緻密、あるものは大胆。使われている素材は紙やくぎ、セロハンテープなど身近にあるものばかり。作家たちの自由な発想と豊かな表現力に圧倒される。障害者の作品という枠を超え、見る人の心に訴えかけてくるようだ▼3歳の時に自閉症スペクトラムと診断を受けた荒川琢磨君(9)が描いた世界地図がある。現実には紛争が絶えない国際社会も、荒川君の作品の中では国と国がモコモコと重なり合い、笑い合っているように見える。こういう世界であればいいのにと思わせる。