9月15日付

9月15日 09:13

 松山の尋常中にいた漱石先生が生徒向けに「愚見数則」という文章を書いた。要するに「勉強しろ」との内容。これが「坊っちゃん」そのまま啖呵[たんか]のような調子である▼「余は教育者に適せず」とまず言う。「立派なる生徒となって、かくの如[ごと]き先生には到底教師は出来ぬものと悟らしむるは、諸子の責任なり」。「余の教育場裏より放逐さるるときは、日本の教育が隆盛になりし時と思へ」▼額面通りには受け取れまい。自信があるから「教育者に適せず」と逆説的に言ったのだろう。漱石は激励を続ける。「理想を高くせよ」「理想は見識より出づ、見識は学問より生ず」▼教師が励ます、生徒が応える。いつの世でも教師冥利[みょうり]に尽きることだが、気になることもある。昨年も指摘したが、教員志望者が減り続けている。熊本県の小学校の場合、今年は158人程度の募集に311人が受験、倍率はついに2倍を割りそうだ▼受験者には倍率が低い方がいいとしても、「3倍ぐらいはあった方が…」と教育行政関係者。教師の力にも関係するようだ。「教師はきつい」と考える大学生が増えたことも影響している▼この傾向は日本を含む先進国共通の悩みで、社会が複雑になり、これまで学校の「守備範囲外」とされていた問題にも対応せざるを得なくなってきた。結果として、教師の負担は増えている▼OECD加盟国の中でも最低級とされる教育予算をどう増やすのか。萩生田光一文科相は安倍晋三首相の最側近とされる。「見識」が問われる場面。