9月11日付

9月11日 08:01

 気が付けばハエがいなくなり、ネットやケータイが徹底的に普及した。買い物はスーパーやコンビニ、通販になり日用品を売る商店はどんどん消えた。近所の空き地もなくなった、と解剖学者の養老孟司さんは「変化と意識」というエッセーで嘆く▼何が起こったのか。すべてが意識の制御下、人間の「つもり」だけで動く、そういう世界になった、と養老さんは指摘する。前もって考えた通りになるはず、という前提で成り立つ社会のありようを問うているのだろう▼では、こちらはどんな「つもり」だったのか。新制度にすればグローバル化に対応できる人材が育つはず、詳細は民間に任せておけば、という安易な発想がどこかになかったか▼来年度から始まる大学入学共通テストで英語の民間試験が導入される問題である。新制度開始まで半年余りに迫ったが、いまだに日程や試験会場など全体像が固まっていない異常な状況だ▼英語で読む、聞く、話す、書くの4技能を評価するため、民間試験を導入すると文部科学省が公表したのが2年前。だが、多くの大学が試験を活用するかどうか明らかにせず、実施団体の一つは参加を取り下げた。公平な採点ができるのかとの不信も根強い▼全国高等学校長協会はきのう、不明点が多い上、経済格差や地域格差への配慮も不十分として延期するよう文科省に要請した。受験生の不安を思えば当然だろう。文科省に求められているのは机上の論理にこだわらず、「受験生ファースト」に立ち返ることである。