8月25日付

8月25日 08:01

 黒沢明監督の代表作の一つに『七人の侍』がある。野武士集団の略奪に悩む農民に雇われる形で集まった7人の侍が軋轢[あつれき]を乗り越え、次第に心を通わせ民の敵を一掃する物語だ▼そんな筋立てが繊細で迫力ある映像とともに、洋の東西を問わず観客の心をつかんだのだろう。1954年の公開から6年後には米国で西部劇『荒野の七人』としてリメークされた▼さて、こちらの7人は世界からの共感を得ることができるのだろうか。フランスに集まった各国の首脳たちである。主役を張る舞台は現地時間24日に開幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)。自由や民主主義などの価値観を共有し、指導力を発揮すべく重要課題について話し合う▼しかし、聞こえてくるのは足並みの乱ればかりだ。自由貿易や温暖化対策などを巡りトランプ米大統領と欧州首脳の隔たりは大きく、議長のマクロン仏大統領は会議の成果文書である首脳宣言を見送る考えという▼自国第一主義のトランプ氏の登場で生じた国際協調の亀裂は深まり、欧州は英国のEU離脱が喫緊の課題となっている。それぞれ足元に懸案を抱える首脳の間に吹き込むすきま風が、75年のサミット開始以来の看板である結束を揺らしているのか▼緊迫する中東情勢や米中貿易戦争に加え、米ロ中の軍拡競争というきな臭い空気も世界に漂う。いまG7サミットに求められるのは原点に戻り世界秩序のシナリオを描くことだ。メルケル独首相に次ぐ古参の安倍晋三首相も当然担うべき役割があろう。