8月19日付

8月19日 08:52

 麻薬の密輸で大金を得た2人の男が放浪の旅に出る。大型バイクにまたがり、真っすぐな道をひたすら東へ-。アメリカン・ニューシネマの代表作「イージー・ライダー」(1969年)である▼翌年には日本でも公開され、当時の若者たちに「自由の国アメリカ」の現実を見せつけた。主題歌「ワイルドで行こう」は今でもテレビ番組などでよく使われる。ふいに流れるメロディーに、若かった頃の自分を重ねる方もおられようか▼主人公の1人、キャプテン・アメリカを演じたのが、16日に79歳で亡くなったピーター・フォンダさんだった。ハンドルを高くしたチョッパー・バイクで疾走する彼の姿は、既存の価値観に背を向けるカウンターカルチャー(対抗文化)の象徴となった▼日本に「カッコいい」という言葉が一気に定着したのもこの頃。作家の平野啓一郎さんは、その理由を「戦後社会に『自由に生きなさい』と放り込まれた人々が、一人一人の個性に応じた人生の理想像を求めたから」と分析している(『カッコいいとは何か』講談社現代新書)▼「カッコいい人やものを求めるのは、いわば“自分探し”である」と平野さん。50年前の若者たちがそうだったように、人は常に何がカッコいいのかを考えながら生き方を模索しているのだろう▼今の若者には、どんな人が「カッコいい」のか。ユーチューバーか、eスポーツの競技者か…。古い世代には見当もつかないが、それこそが「カッコいい」を成立させる必須条件なのかもしれない。