8月18日付

8月18日 08:48

 「銃弾とアヘン」。中国出身でドイツに亡命した詩人廖亦武さんは、30年前の天安門事件をたどる近著で今の中国をこう例えている。銃弾は政府が反体制派を黙らせる強権、アヘンは経済成長の恩恵である▼1989年6月4日早朝、民主化を求め北京の天安門広場を占拠していた市民に軍隊が武力行使、多数の死傷者を出し世界を震撼[しんかん]させた。以降、独裁へと中国の進路は決まり、民主化を求める声は消費の快感やナショナリズムにかき消された、と振り返る▼その中国に米政府高官が、天安門を覚えているぞ、と警告した。中国への容疑者引き渡しを可能にする条例改正をめぐり、抗議デモが続く香港情勢である。「非民主的な政治が広がる」と中国影響下の香港政府に抗議する市民に対し、中国は香港近くに武装警察を集結させて緊張が高まった▼トランプ大統領は「暴力的な弾圧は見たくない」と武力介入の動きをけん制。習近平主席を「信頼している」とも述べたが、中国政府は「内政干渉」と切り捨てる。果たして効果は▼「私に敵はいない。憎しみもない」。言論を武器に生涯を中国の民主化にささげた故・劉暁波さんの言葉だ。香港では一部デモ隊の空港占拠や記者への暴行などもあった。過激に走らず、解決に向けた互いの対話、協力を求めたい▼一方で気になるのは欧米や日本の及び腰である。世界第2位の経済大国が冷え込めば…との配慮もありや。その間も習指導部の抑圧は強まる一方だ。アヘンに酔いしれては大切なものを失う。