7月18日付

7月18日 08:54

 <天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出[い]でし月かも>。阿倍仲麻呂がこう詠んだように、古くから月は最も身近な天体であり神秘的な存在だった。そこに人類が初めて足跡を残して、もう半世紀になる▼米国の宇宙船アポロ11号が月に着陸したのは1969年7月20日。小学生だった当方、「すごいことが起きたんだ」と胸が躍った覚えがある。もちろん米ソの激烈な宇宙競争など知るよしもなかった▼故ニール・アームストロング船長とともに月に降り立ったバズ・オルドリンさん(89)によれば、月面歩行はわずか2時間半。月は非常に小さく、地平線が近いのですぐに方向感覚を失ってしまう、と著書『ミッション・トゥ・マーズ』(エクスナレッジ)にある▼オルドリンさんは米国の次の目標として火星を目指すべきだ、と主張する。爆発的な人口増加によって地球で入手できる資源は早晩枯渇する。人類は互いに協力して火星に入植し、「地球化」を進めなければならない、と▼トランプ米政権も当初は国際協力により月を周回する新宇宙ステーションを建造し、火星などの探査の足掛かりにしようとしていた。だが、今年になって方針転換。中国やロシアに対抗して月面再着陸へと目標を変えた。背景には月の資源の存在がある▼月の砂はきつい臭いがした、とオルドリンさんは記す。焼けた炭か、暖炉の灰に水を少しまき散らしたような臭いだそうだ。では地球はどうだろう。国際協調とは裏腹に、きな臭さだけが充満している気もする。