忘年会、初詣、成人式どうなる コロナ“第3波”熊本県民不安

熊本日日新聞 | 2020年11月28日 11:30

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中華居酒屋「葉さん」のキッチンに立つ経営者の葉増さん。「どれだけ感染対策をしても忘年会の予約はまだゼロ」と肩を落とす=24日夜、熊本市中央区

 熊本県内の新型コロナウイルス感染者が27日、累計で1000人を超えた。全国的に“第3波”とされる感染拡大が続く中、忘年会に初詣、成人式など年末年始の恒例行事に関わる人たちは、暗い影を落とす感染拡大の行方を不安そうに見守る。

 「例年なら11月に入れば、週末は予約で埋まっていたのに、いまだに忘年会の予約はゼロ」。熊本市中央区の新市街アーケードで中華居酒屋「葉さん」を営む中国出身の葉増[ようぞう]さん(38)の表情は沈痛だ。

 約700万円かけて新たに換気扇を発注するなど設備投資し、大皿に個別の取り箸を添えるなど感染対策に神経を使う。だが、「会社関係は会食自粛というし、常連客も少ない。それでも食材は仕入れなければならず、家賃や人件費もかかる」と苦しい状況だ。

 12月の売り上げで翌年の経営判断をする飲食店も多いという。葉さんは「年内は持ちこたえても、来年は軒並み閉店ということもある」と心配する。

 コロナ禍で迎える初めての初詣に備え、県内1347社で組織する県神社庁事務局は、神社本庁(東京)から出たガイドラインの周知に追われる。既に手水[ちょうず]舎のひしゃくの利用を控えるなど、各神社とも手探りで対応しているが、谷川林之介事務局長(55)は「何せ初めての経験で」。

 大規模な神社からは「分散参拝」を呼び掛ける声も上がる。ただ、“地域の氏神”として小規模な神社が多い県内では、「仕事をしながら神職を兼務する『1人神主』も多く、年末や三が日を除いた時期の初詣客の対応は難しい」という。

 幸い「3密」になりそうな神社はそう多くないため、「境内での飲食などを控えていただき、大声を出さず静かにお参りしていただければ」と話した。

 「1月上旬に帰省する予定だが、感染の状況を見て直前に判断しようかと…」。熊本市中央区の医師、蛯原桃子さん(51)は、大阪府箕面[みのお]市で暮らす大学生の長女薫さん(20)の成人式出席に気をもむ。コロナによる中止も見据え、呉服店に無理を言って夏の帰省に合わせて振り袖を仕上げてもらい、写真の前撮りも済ませた。

 ただ、薫さんは成人式に合わせて開かれる中学の同窓会の幹事も務める。準備など頑張っている様子を聞けば「何とか無事に参加させてあげたい」とも思う。式当日の着付けやヘアメークは、薫さんが小学生の時から利用する近所の美容室に予約しているが、「直前のキャンセルも構わない」と言ってもらっていることが救いだ。

 熊本市は1月11日の午前と午後の2回に分けて、式を開催予定。時間は各40分に短縮する。ただ、担当する市生涯学習課の青山和人課長(52)は「国のイベント制限が強化されたり、緊急事態宣言が出されたりすれば、直前でも中止にせざるを得ない」と話す。(太路秀紀、堀江利雅)